冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
「去年の話ね…その時は、私はまだこうやって家に頻繁に出入りはしていなかったから、翌日にシュウから聞いたのだけれど…冬だったのに」
後先考えないんだから。
ほほほほほ。
笑いのツボが落ちついてきたのか、笑い方が穏やかになってくる。
ほほほって。
そんな笑顔で済ませていいものなのかと、メイは困った眉になってしまった。
付き合いが長いと、そういうところにも慣れるものなのだろうか。
「彼はね…」
ふっとハルコは、モップを持ったままちょっとだけ上を見た。
「彼はね…思い通りにならないと、本当にすぐ怒ったり暴れちらしたり手がつけられなくなるのよ…自分の興味のない方向になると、途端に冷めているのに、本当に欲しいものの前では、いつもそうなの」
だから、彼の態度を見ていたら、いま一番何が欲しいのかすぐに分かるのよ。
モップの柄を握り直しながら、ハルコは彼女の方を見る。
『分かる?』と伺うような目で。
ああ。
メイは、少し胸がチクンと痛んだ。
付き合いの長さという壁が、ハルコの前に見えたのである。
彼女は、本当にカイトのことをよく知っているようだ。
もしかしたら、彼の心まで――
それは、まだ自分にはないものだ。
きまぐれに偶然に奇跡的に、翻訳がうまくいく時はあるけれども、あとの彼の心の中は、無限のブラックホールなのである。
怒鳴りや怒り一つ取っても、まだうまく理解出来ないのだ。
「そうなんですか……」
そう答えることしか出来なかった。
カイトのことを知るのに、他の人の言葉ではどうしようもないのだ。
知識として知ることと、肌で覚えることは違うのである。
たとえ、ここでハルコの言葉を丸飲みしたとしても、それは何の応用もない知識に過ぎない。
学校のテストではいい点数が取れたとしても、実地でうまくいくとは限らないのだ。
「去年の話ね…その時は、私はまだこうやって家に頻繁に出入りはしていなかったから、翌日にシュウから聞いたのだけれど…冬だったのに」
後先考えないんだから。
ほほほほほ。
笑いのツボが落ちついてきたのか、笑い方が穏やかになってくる。
ほほほって。
そんな笑顔で済ませていいものなのかと、メイは困った眉になってしまった。
付き合いが長いと、そういうところにも慣れるものなのだろうか。
「彼はね…」
ふっとハルコは、モップを持ったままちょっとだけ上を見た。
「彼はね…思い通りにならないと、本当にすぐ怒ったり暴れちらしたり手がつけられなくなるのよ…自分の興味のない方向になると、途端に冷めているのに、本当に欲しいものの前では、いつもそうなの」
だから、彼の態度を見ていたら、いま一番何が欲しいのかすぐに分かるのよ。
モップの柄を握り直しながら、ハルコは彼女の方を見る。
『分かる?』と伺うような目で。
ああ。
メイは、少し胸がチクンと痛んだ。
付き合いの長さという壁が、ハルコの前に見えたのである。
彼女は、本当にカイトのことをよく知っているようだ。
もしかしたら、彼の心まで――
それは、まだ自分にはないものだ。
きまぐれに偶然に奇跡的に、翻訳がうまくいく時はあるけれども、あとの彼の心の中は、無限のブラックホールなのである。
怒鳴りや怒り一つ取っても、まだうまく理解出来ないのだ。
「そうなんですか……」
そう答えることしか出来なかった。
カイトのことを知るのに、他の人の言葉ではどうしようもないのだ。
知識として知ることと、肌で覚えることは違うのである。
たとえ、ここでハルコの言葉を丸飲みしたとしても、それは何の応用もない知識に過ぎない。
学校のテストではいい点数が取れたとしても、実地でうまくいくとは限らないのだ。