冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「そうなんですかって…」

 ハルコは、困ったような笑顔になった。

 えっ、とメイは瞬きをした。

 彼女を残念がらせるような言葉を言ったのだろうか。
 もっと、分かったような反応を返した方が良かったのか。

「あの…」

 心配になって、ハルコを見つめる。

 ここでのナビゲーターは、彼女しかいないのだ。

 カイトに何かを習うなんてとんでもないし、シュウという男には、冷たい視線で一瞥されそうだった。

 彼女の夫なら、いろいろ教えてくれるかもしれないけれど、次にいつ来るかなんて分からない。

 毎日のように現れるハルコだけが、頼りだというのに。

「ああ、違うのよ…そうじゃないの…」

 何かを誤解したと思ったのだろうか、ハルコが小さく首を振る。

 脇を向いて小さく呟いた後、彼女はモップを動かし始めた。

 それ以上、メイも追求できなて、窓を拭くことにした。
 ガラス磨きのスプレーを吹きつけて、持ってきた椅子に乗って――

 やりにくい。

 それもそのハズだ。

 彼女はスカート姿なのだ。

 しかも、安物のスカートとは思えないロングフレアーで。

 花柄はとても可愛いし、すごく気に入ったのだが、掃除をするのに余りに向いていない衣装だ。

 汚してしまいそうで、ヒヤヒヤしてしまう。

 レンタル衣装を来たモデルのような気分で、彼女は注意深く窓拭きをした。

 でも、やっぱり気になる。

 家の掃除をする時は、いつもジーンズとか汚れてもいいような格好だった。

「……」

 これから、毎日こういう衣装で掃除、というのはかなり問題ありだ。

 しかし、クローゼットの中はそういうものばかりで。

 ジーンズとかエプロンとか、汚れても平気なものは何一つなかった。
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