冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ハルコを見る。

 前から思っていたのだが、彼女は今でも秘書で通用するような衣装だ。
 ブラウスにタイト姿である。
 なのに、そのまま掃除をしていた。

 立ち居振る舞いの質が、最初から自分と違うのが、端から見ているだけででも分かる。

 書道の時間に、どうしても服をスミで汚していた自分とは、根本的に違うのだ。

 きっと彼女なら、ドレス姿でもスミを飛ばしたりしないだろう。

「なに…?」

 じーっと見ていたのに気づいたのだろう。

 椅子の上に登ったままのメイに声をかける。

「え…あの…いえ…」

 いきなり聞かれても、何と言えばいいのか分からないのだ。
 彼女は、椅子の上でしどろもどろになった。

 こういう慌てる状態になると、大抵ロクでもないことが起きる。

 椅子から転がり落ちるとか。

 とりあえず、予測が本当のことにならないように、椅子から下りた。

 しかし、もしもこれからここに置いてもらえ続けるというのなら、できれば仕事の出来る服が一着は欲しかった。

 でも、こんなにいい服を買ってもらってるのに、もう一着、だなんて口が裂けても言えない。

 うーん、うーん。

 メイは、頭を悩ませた。

「あの…まだ、一回も着てない服がいくつもあるんですけど…返品とか…出来ませんよね?」

 おそるおそる。

 言葉に、ハルコが目を見開いた。

「どうして? 気に入らなかったの?」

 いきなり、物凄く心配そうな顔になる。
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