冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 しまった、と思った。

 そうなのだ。服を見立ててきてくれたのは、ハルコなのである。
 浅はかな考えを口にしてしまった自分を恥ずかしく思った。

「いえ! 違います! みんなステキな服ばかりです!」

 慌てて、握り拳でそれを否定した。

「でも…どれも、とても綺麗な服なので…お掃除とか料理とかで汚してしまいそうで…それで」

 それで、返品が出来るというのなら、そのお金の一部で安い服をと思ったのだ。

 ハルコは、とても不思議そうな目で彼女を見ていた。

「仕事の出来る服が、欲しいということ?」

 その不思議を確認するかのように、ゆっくりとした口調で聞いてくる。

 不快にさせてしまったかもしれない。

 メイは、「はい」と小さく頷きながらも、心配のムシに噛みつかれてしまった。

「ああもう、社長ったら…」

 しかし、そこでため息をついたハルコの口から出たのは、メイへの非難でも何でもなく、ここの主人への呆れた呼び声だった。

 ふっとこぼれた呼称は、昔のクセか。

「…全然、気が利かない人なんだから」

 大きなため息。

 どうして、いきなり話題がカイトに行くのか。

 話のジャンプについていけいメイは、雑巾片手に戸惑ったままだった。
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