冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
何だ……こいつ。
不審な目で、ジロジロ見てしまうカイトだった。
普通のホステスなら、軽い冗談の一つも飛ばし、さっさと水割りを作り始め、しなだれかかってもおかしくない時間を、彼女は無言で固くなったままだったのだ。
「あ……あ、すみません……すぐお作りします」
ハッと仕事に気づいたかのように、でも、これでカイトの方を見なくて済む理由が出来たかのように、彼女はグラスに手をかけた。
震えている指先。
カラン、カランッ。
落ち着かない手によって氷がグラスに落ちていくのを見ていたら、カイトの方がすっかり冷静になってしまった。
何となく、理由が分かってしまったのである。
「おめー……店出んの、今日が初めてだろ?」
ぼそっと。
元々、こういう席で騒ぐような性格じゃない。
カイトは、彼女にしか聞こえないくらいの声の音量でつぶやいた。
視線を、その細い指先に向けたまま。
指先が、止まる。
最後に落とした氷だけが落下していき――
カラーン。
グラスの中で一回転する。
「はい……すみません……」
自分の行動が、余りにマズイものであると気づいたのだろう。
消え入りそうな声だった。
そのまま放っておけば、どんどん小さくなって最後には消えてしまいそうに思えて、カイトはため息をつく。
「別に、気にしねーから……ほれ、水割り作れ」
何で、オレがホステスに気を使わなきゃなんねーんだ。
理不尽なものを感じはしたが、カイトはそれをガリガリと氷のように噛んだ。
女イジメて楽しんでもしょうがないからである。
「あ……はい」
ウィスキーを持ち上げて、水割りを作るためにグラスに注ぎ始める。
カイトは見ていて――しかし笑い出しそうになった。
彼女は、グラスの半分ほどまでウィスキーを注いだかと思うと、次に水を入れようとしたのである。
何だ……こいつ。
不審な目で、ジロジロ見てしまうカイトだった。
普通のホステスなら、軽い冗談の一つも飛ばし、さっさと水割りを作り始め、しなだれかかってもおかしくない時間を、彼女は無言で固くなったままだったのだ。
「あ……あ、すみません……すぐお作りします」
ハッと仕事に気づいたかのように、でも、これでカイトの方を見なくて済む理由が出来たかのように、彼女はグラスに手をかけた。
震えている指先。
カラン、カランッ。
落ち着かない手によって氷がグラスに落ちていくのを見ていたら、カイトの方がすっかり冷静になってしまった。
何となく、理由が分かってしまったのである。
「おめー……店出んの、今日が初めてだろ?」
ぼそっと。
元々、こういう席で騒ぐような性格じゃない。
カイトは、彼女にしか聞こえないくらいの声の音量でつぶやいた。
視線を、その細い指先に向けたまま。
指先が、止まる。
最後に落とした氷だけが落下していき――
カラーン。
グラスの中で一回転する。
「はい……すみません……」
自分の行動が、余りにマズイものであると気づいたのだろう。
消え入りそうな声だった。
そのまま放っておけば、どんどん小さくなって最後には消えてしまいそうに思えて、カイトはため息をつく。
「別に、気にしねーから……ほれ、水割り作れ」
何で、オレがホステスに気を使わなきゃなんねーんだ。
理不尽なものを感じはしたが、カイトはそれをガリガリと氷のように噛んだ。
女イジメて楽しんでもしょうがないからである。
「あ……はい」
ウィスキーを持ち上げて、水割りを作るためにグラスに注ぎ始める。
カイトは見ていて――しかし笑い出しそうになった。
彼女は、グラスの半分ほどまでウィスキーを注いだかと思うと、次に水を入れようとしたのである。