冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ハウスキープなんか彼に出来るはずもなく、それを通いの家政婦にやらせているのだ。

 けれど。

 実際に広い家を、どかんと手に入れてみれば。

 中に入れるものが、あまりに少ないことに気付いたのだ。

 1人ではどうにも持て余すくらいに広く、自分がパソコン関係以外に、ロクなものを持っていなかったことに気付くのである。

 結局、自分の部屋に持ち込んだパソコンは、ノートパソコンだけ。

 おかげで家は、ほとんど寝起きするだけの場所になった。

 他の込み入ったコンピュータは、会社にあった方が便利だったのだ。

 それでは、あまりのこの部屋もガランとしているので、無駄なくらいに大きなベッドを買った。ソファも。

 どんなに彼が大の字で寝ようが、寝相が悪かろうが転がり落ちることのないベッドに慣れるまで、実に1週間かかった。

 それでも部屋が余り過ぎていたので、便利だったという意味もあったが、彼の相棒を住まわすことにした。

 1階に、相棒の部屋はある。

 まだ仕事をしているか、もう寝たかは分からない。

 けれども、彼は全然静かな男で、そして無駄が嫌いな男だった。

 結局、住まわせていようがいまいが、余り違いがない状態なのである。

 そうして。

 この洋館は、本当に寝るだけの場所になった。

 それ以外に、カイトには使い道がなかったのである。

 その家に――女を連れ込んだのは、これが初めてだった。
< 30 / 911 >

この作品をシェア

pagetop