冬うらら~猫と起爆スイッチ~
12/02 Thu.-4
●68
メイは、まだ動揺から立ち直っていなかった。
そんな状況の時に、カイトがダイニングに現れたのである。
黒いトレーナーにジーンズ姿だ。
思えば、私服らしい私服を見るのは、これが始めてだった。
こんな格好もするんだ――当たり前の話だが、不思議に思ってしまう。
いつもと、またかなり印象が違っていた。
こうしていると、会社の社長であるとかいうことを忘れてしまいそうになる。
普通の同世代の男の人にしか見えないのだ。
カイトは黙って席について。
見とれていたメイは、慌てて保温プレートの上の鍋を開けようとした。
「あつっ…!」
慌てすぎた。
蓋の裏側の熱い水滴が、ぱっともう片方の手に散ったのだ。
反射的に声をあげてしまった。
ガタッ!
声とほぼ同時に、カイトは椅子から立ち上がり、向かいのメイの方へと身を乗り出す。
その勢いに、彼女はビックリしてしまった。
「あ、すみません…大丈夫です。ちょっと飛んだだけで」
メイは、慌ててフタを持ったまま弁解した。
事実、大したことはなかった。
ただ、熱い水滴が何滴か手に落ちただけである。
フタも落としたりしなかったし、ヤケドなんて大げさなものは何もなかった。
一瞬、叱られるかと思った。
元々やらなくてもいい、と言われているようなことをしているのだ。
それなのに、こんなソコツな真似をしてしまって。
また、作るなと言われるんじゃないかと思って心配になった。
「あの…ホントに全然…」
立ち上がっていたカイトは、彼女の言葉にぎゅっと口をつぐむと、ドスンとまた椅子に戻った。
すごくイヤそうな顔を横にそむけた。
唇も眉間も歪んで、いつもと違う影になっている。
きっとイラついたのよね。
そうよね。
ドンくさい自分に、メイは落ち込みそうになる。
メイは、まだ動揺から立ち直っていなかった。
そんな状況の時に、カイトがダイニングに現れたのである。
黒いトレーナーにジーンズ姿だ。
思えば、私服らしい私服を見るのは、これが始めてだった。
こんな格好もするんだ――当たり前の話だが、不思議に思ってしまう。
いつもと、またかなり印象が違っていた。
こうしていると、会社の社長であるとかいうことを忘れてしまいそうになる。
普通の同世代の男の人にしか見えないのだ。
カイトは黙って席について。
見とれていたメイは、慌てて保温プレートの上の鍋を開けようとした。
「あつっ…!」
慌てすぎた。
蓋の裏側の熱い水滴が、ぱっともう片方の手に散ったのだ。
反射的に声をあげてしまった。
ガタッ!
声とほぼ同時に、カイトは椅子から立ち上がり、向かいのメイの方へと身を乗り出す。
その勢いに、彼女はビックリしてしまった。
「あ、すみません…大丈夫です。ちょっと飛んだだけで」
メイは、慌ててフタを持ったまま弁解した。
事実、大したことはなかった。
ただ、熱い水滴が何滴か手に落ちただけである。
フタも落としたりしなかったし、ヤケドなんて大げさなものは何もなかった。
一瞬、叱られるかと思った。
元々やらなくてもいい、と言われているようなことをしているのだ。
それなのに、こんなソコツな真似をしてしまって。
また、作るなと言われるんじゃないかと思って心配になった。
「あの…ホントに全然…」
立ち上がっていたカイトは、彼女の言葉にぎゅっと口をつぐむと、ドスンとまた椅子に戻った。
すごくイヤそうな顔を横にそむけた。
唇も眉間も歪んで、いつもと違う影になっている。
きっとイラついたのよね。
そうよね。
ドンくさい自分に、メイは落ち込みそうになる。