冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 おず。

 そんな素足から、メイは出てきた。

 頭が。

 いきなり、頭がぼぉっとなった。

 そこには――知らない女がいたのだ。

 暗いところでしかしっかり見ていなかった彼女は、まるで全然別人だった。

 カイトが、目を疑ったくらいだ。

 濡れた黒い髪は、室内灯で艶やかにと輝いている。

 いや、それよりも何よりも、顔だ。

 あのケバい化粧が、似合わないハズである。

 ぬけるように白い肌に、年齢が読みにくいあどけなさの残る顔が、カイトを見ていたのだ。

 戸惑った不安そうな目だけは、バスルームに入る前と変わりなかったが。

 カイトは一度目を閉じて、もう一回ゆっくり開けてみた。

 しかし、事態は何ら変わっていなかった。

 女は化けるというが、あの後からすれば、こっちの方が断然化けたように見える。

「おめー……」

 ぼぉっとしたまま、カイトは呼び掛けようとした。

 口調まで、我知らずぼうっとしてしまった。

 が、しかし。

 いきなり、脳天を打ち割られるような衝撃が襲ってきたのだ。

 メイは――彼女は。

 素肌にタオル一枚の姿だったのである。

「ばっ……バカ! 何てカッコしてやがんだ!」

 がばっとソファから立ち上がった。

 そうして、自分が彼女のために何の着替えも用意していなかったことに、ここでようやく気付いたのである。

 女の着替えなど、カイトが思いつけるハズもなかった。
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