冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「あのっ!」
ダイニングを出ていきかけたカイトは、少し強い声で呼び止められた。
ちょうど、彼女について考え込んでいただけに、驚いてはっと振り返ってしまう。
「あの…食後のお茶でもいかかですか? コーヒーがよければ、コーヒーいれます」
呼び止めるのに、勇気を費やした顔をしている。
メイは、一生懸命な唇でそれを訴えるのだ。
しかし、その内容はお茶という、カイトにとってはくだらない時間への誘いだった。
お茶のためだけに時間を割くという感覚は、彼にはないのだ。
茶なら、仕事しながらとか、他のことをしながらでも飲めるのだから。
しかし。
メイの様子に、彼は引っかかった。
もしかしたら、お茶というのは口実で、他に彼に言いたいことがあるのではないだろうか――そう思えたのだ。
言いたいこと。
胸がひやっとする。
彼女のことを余りに知らない分、何を言い出されるか想像がつかなかったのだ。
もしかして。
イヤな考えが掠めた。
出て…行くのか?
考えられない話ではない。土台、不自然な同居生活なのである。
あれから数日が経って、彼女も落ち着いていろいろ考えたのかもしれなかった。
だから、カイトの考えも及ばない結論にたどりついているのかも。
それが、怖かった。
「別に…いらねぇ」
彼は、お茶の誘いを―― 要するに、その裏側の誘いを断った。
お茶の誘いを断るだけなら、何の問題もないはずだからだ。
再び、そこを出ようとした。
「あ、あの!」
もう一度、呼び止められる。
間違いなかった。
メイは、何か言いたいことがあるのだ。
お茶はその口実にすぎなかったのである。
しかし、彼女の言葉は影縫いのようにカイトの足を止めた。
ドアのところで、立ち止まってしまったのだ。
「あのっ!」
ダイニングを出ていきかけたカイトは、少し強い声で呼び止められた。
ちょうど、彼女について考え込んでいただけに、驚いてはっと振り返ってしまう。
「あの…食後のお茶でもいかかですか? コーヒーがよければ、コーヒーいれます」
呼び止めるのに、勇気を費やした顔をしている。
メイは、一生懸命な唇でそれを訴えるのだ。
しかし、その内容はお茶という、カイトにとってはくだらない時間への誘いだった。
お茶のためだけに時間を割くという感覚は、彼にはないのだ。
茶なら、仕事しながらとか、他のことをしながらでも飲めるのだから。
しかし。
メイの様子に、彼は引っかかった。
もしかしたら、お茶というのは口実で、他に彼に言いたいことがあるのではないだろうか――そう思えたのだ。
言いたいこと。
胸がひやっとする。
彼女のことを余りに知らない分、何を言い出されるか想像がつかなかったのだ。
もしかして。
イヤな考えが掠めた。
出て…行くのか?
考えられない話ではない。土台、不自然な同居生活なのである。
あれから数日が経って、彼女も落ち着いていろいろ考えたのかもしれなかった。
だから、カイトの考えも及ばない結論にたどりついているのかも。
それが、怖かった。
「別に…いらねぇ」
彼は、お茶の誘いを―― 要するに、その裏側の誘いを断った。
お茶の誘いを断るだけなら、何の問題もないはずだからだ。
再び、そこを出ようとした。
「あ、あの!」
もう一度、呼び止められる。
間違いなかった。
メイは、何か言いたいことがあるのだ。
お茶はその口実にすぎなかったのである。
しかし、彼女の言葉は影縫いのようにカイトの足を止めた。
ドアのところで、立ち止まってしまったのだ。