冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
結果。
カイトは、敗れ去ったのである。
自分の部屋の床にたたきつけた札束の数は、持って出た時とまったく同じである。
ただ一枚、抜け落ちただけだった。
たかが、一万で何を買うというのか。
カイトにしてみれば、何の労力もせずにすぐ使い切れるだけの金額だ。
彼には節制という言葉はない。
なまじ、若くして大金を使える環境になったせいで、金銭感覚が壊れてしまっているのだ。
そんな彼と、メイの感覚が一致するハズもなかった。
ただ、救いは―― ハルコの持っている生活費から少し分けてもらう。
その言葉だった。
彼女にある程度のお金を渡しておけば、メイが困ることはないだろう。
週末以外は、毎日来ているのだから。
だが、意味もなくお金を渡せば、ハルコは疑うだろう。
かといって、説明をしたくもなかった。
彼女が、金の裏側を察しないことを願うしかなかったが。
無理だ。
絶対無理だと、最初からカイトは分かっていた。
あのハルコが見過ごすハズがない。
だから、最初からお金を握らせておきたかったのだ。
そんな不幸が訪れないように。
けれども、メイにあんな目で、しかも忌々しいことに、あのウソについて一生懸命語られた日には。
突っぱねられなかったのである。
あのウソが、まだ彼女の中でしっかりと生きている――架空のカイト像を作り上げた真犯人だ。
けれども、今更それを「ウソだ!」と取り除けるハズもない。
それじゃあ何で助けたのかと聞かれても、やっぱりどうしても答えられないからだ。
いや、違う。
いまは余計に答えられないのである。
好きだ。
ムカッッ!
自分で覚えた感情に自分で苛立ったカイトは、衝動的に札束を蹴っ飛ばした。
そして、もう二度とそれを見ないようにしながら、ベッドに飛び込んだのだった。
結果。
カイトは、敗れ去ったのである。
自分の部屋の床にたたきつけた札束の数は、持って出た時とまったく同じである。
ただ一枚、抜け落ちただけだった。
たかが、一万で何を買うというのか。
カイトにしてみれば、何の労力もせずにすぐ使い切れるだけの金額だ。
彼には節制という言葉はない。
なまじ、若くして大金を使える環境になったせいで、金銭感覚が壊れてしまっているのだ。
そんな彼と、メイの感覚が一致するハズもなかった。
ただ、救いは―― ハルコの持っている生活費から少し分けてもらう。
その言葉だった。
彼女にある程度のお金を渡しておけば、メイが困ることはないだろう。
週末以外は、毎日来ているのだから。
だが、意味もなくお金を渡せば、ハルコは疑うだろう。
かといって、説明をしたくもなかった。
彼女が、金の裏側を察しないことを願うしかなかったが。
無理だ。
絶対無理だと、最初からカイトは分かっていた。
あのハルコが見過ごすハズがない。
だから、最初からお金を握らせておきたかったのだ。
そんな不幸が訪れないように。
けれども、メイにあんな目で、しかも忌々しいことに、あのウソについて一生懸命語られた日には。
突っぱねられなかったのである。
あのウソが、まだ彼女の中でしっかりと生きている――架空のカイト像を作り上げた真犯人だ。
けれども、今更それを「ウソだ!」と取り除けるハズもない。
それじゃあ何で助けたのかと聞かれても、やっぱりどうしても答えられないからだ。
いや、違う。
いまは余計に答えられないのである。
好きだ。
ムカッッ!
自分で覚えた感情に自分で苛立ったカイトは、衝動的に札束を蹴っ飛ばした。
そして、もう二度とそれを見ないようにしながら、ベッドに飛び込んだのだった。