冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 室内は。

 いや、彼女が入ってそう遠くないところに。

 お金が散乱していたのである。

 とんでもない光景に、メイは息を詰めた。

 でないと、本当に悲鳴が出てしまいそうになったのだ。

 帯で止められて無傷な分もあるが、その内の一つから、派手に飛び散っているのである。

 どうみても。

 さぁっと青ざめる。

 どう見ても、昨日メイが受け取りを拒んだお金だった。

 それが、朝にはこの惨状である。

 カイトは、物凄く怒っていたのだろうか。
 お金を床に叩きつけて、こんな風にしてしまうくらい。

 ど、どうしよう。

 オロオロしてしながらも、このままじゃいけないということだけは分かる。

 とりあえず、床にちらばっているお札を拾い集めた。
 お金は、こんな風に床に置いておくものではないのだ。

 慌てる指では、なかなかうまくいかない。

 しかし、お札を集めている内に、だんだんオロオロが消えていく。

 代わりによぎるのは、カイトへの評価。

 何て人なの!

 心の中でそんな風に悲鳴をあげた。

 これがいけない。

 毎日、メイの予想が何もかもがあっさりと裏切られて、信じられない事件が起きる。

 本当に毎日、だ。

 出会ってから数日だというのに、カイトの感覚は、彼女の知っている世界を遙かに飛び越えていた。

 落ち込んでいるヒマなんか、すぐになくなってしまうのだ。

 振り回されるので精一杯。

 そうなると、胸がドキドキする虫に噛みつかれるばかりで防衛する術もない。

 とにかく、かき集めたお札を綺麗に重ねて、パソコンのある机の上に置く。

 これなら、カイトだってすぐに気づいてくれるだろう。
< 334 / 911 >

この作品をシェア

pagetop