冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□73
「おはようございます」

 朝日をバックに、メイが笑っていた。

 カイトは、目を奪われた。

 そう、昨日の朝と同じ事態に陥ってしまったのである。

 クソッ。

 彼女が出ていった後、頭を押さえて唸った。

 こんな幸せで拷問な朝が、これから毎朝襲ってくるというのだ。

 明日も明後日もその次も、起床の度に彼女の表情に撃ち抜かれるというのか。

 冗談ではなかった。

 心臓に悪い朝。

 けれども、手放せない朝。

 カイトは、内心でもう一度汚い言葉を呟いてから、ベッドを下りた。

 あっという間に用意を済ませて、部屋を出ていこうとする自分に気づいていた。
 メイの持つ引力とは、物凄いものだ。

 しかし、ドアを開けかけた彼は、回れ右をする。

 クローゼットに用事があったのだ。

 ガシャン、ドシャン!

 クローゼットに頭を突っ込んで、カイトはもどかしく暴れた。

 捜し物以外には見向きもせずに掴み出す。

 厚手のブルゾン。これはすぐ見つかった。

 しかし、どこに突っ込んだのかもう一つの目当てがない―― と思ったら、収納ボックスの一番上に乗せてあった。

 掴み出す。

 ライダー用手袋だった。

 昨日の失敗を犯すまいと思ったのだ。

 その2点を掴んで、部屋を出て階段を駆け下りる。

 足が、ダイニングに向かいかけたが止めた。
 先にしなければならないことがあったのだ。

 彼は玄関を出た。

 途端、息が真っ白になる。

 今日も、昨日に負けず劣らず寒いのだ。
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