冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「鮭、焼けましたよ…」
嬉しそうな顔で、お皿を持って近付いてくる。
鮭が焼けたのが、どうしてそんなに嬉しいのか理解できなかった。
しかし、彼の席にそれが置かれて、ピンクの肌を見た時―― 懐かしい匂いの理由が分かった。
朝から魚を食べるなんて習慣を、長い間忘れていたのだ。
席についた彼の前に、真っ白なご飯と刻みたてのネギの浮いたみそ汁が置かれる。
それから、あったかいお茶。
カイトは、瞬きをするしかできなかった。
魔法のように、次々と温かいものが並んでいくのである。
彼が、さっきまでとても寒い思いをしたのを知っているかのように。
居心地が悪かった。
眉をしかめて、その感触をやりすごそうとする。
そんなカイトの様子に気づかずに、自分の分の支度を終えたメイは、向かいの席に座った。
にこにこと彼を見ている。
カイトが食べるのを待っているのだ。
がしっ。
みそ汁の椀を掴む。
乱暴な動きになったのは、心の中にいるメイのせいだ。
知らないことがたくさんある。
こんなに料理を出来る女だとは思っていなかった。
いや、出来なくたってよかったのに。
ずっ。
みそ汁をすすった。
熱い感じが、一気に身体の中に回り始めた。
カイトには、味について風情のある回答は何も出てこない。
大体、食べるという行為は嫌いではないが、そこまで執着があるわけでもないのだ。
シュウは、はっきりきっぱり『時間の無駄』と思っているようだが。
すすった後、椀を抱えたままメイを見る。
じっと、向こうも見ていた。
どうやら彼女は、毎回カイトに『うめー』という言葉を言わせようと思っているようだ。
あんな苦手な言葉を。
いままでだって、何とか絞り出してきたのに。
もう一口すすった。
まだ見ている。
心配そうな顔になってきたのが分かった。
「鮭、焼けましたよ…」
嬉しそうな顔で、お皿を持って近付いてくる。
鮭が焼けたのが、どうしてそんなに嬉しいのか理解できなかった。
しかし、彼の席にそれが置かれて、ピンクの肌を見た時―― 懐かしい匂いの理由が分かった。
朝から魚を食べるなんて習慣を、長い間忘れていたのだ。
席についた彼の前に、真っ白なご飯と刻みたてのネギの浮いたみそ汁が置かれる。
それから、あったかいお茶。
カイトは、瞬きをするしかできなかった。
魔法のように、次々と温かいものが並んでいくのである。
彼が、さっきまでとても寒い思いをしたのを知っているかのように。
居心地が悪かった。
眉をしかめて、その感触をやりすごそうとする。
そんなカイトの様子に気づかずに、自分の分の支度を終えたメイは、向かいの席に座った。
にこにこと彼を見ている。
カイトが食べるのを待っているのだ。
がしっ。
みそ汁の椀を掴む。
乱暴な動きになったのは、心の中にいるメイのせいだ。
知らないことがたくさんある。
こんなに料理を出来る女だとは思っていなかった。
いや、出来なくたってよかったのに。
ずっ。
みそ汁をすすった。
熱い感じが、一気に身体の中に回り始めた。
カイトには、味について風情のある回答は何も出てこない。
大体、食べるという行為は嫌いではないが、そこまで執着があるわけでもないのだ。
シュウは、はっきりきっぱり『時間の無駄』と思っているようだが。
すすった後、椀を抱えたままメイを見る。
じっと、向こうも見ていた。
どうやら彼女は、毎回カイトに『うめー』という言葉を言わせようと思っているようだ。
あんな苦手な言葉を。
いままでだって、何とか絞り出してきたのに。
もう一口すすった。
まだ見ている。
心配そうな顔になってきたのが分かった。