冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 この気持ちが、お金を源に始まっているのだと思われたらすごくつらいし、もし本心からだと分かってもらえたとしても、その後に困るのはカイトなのである。

 あの家に置いてもらえないかもしれない。

 そう考えると、ぎゅっとメイは唇を閉ざすのだった。

「ああ、私のことね…でも、毎日ずっとというわけじゃないのよ。これでも、週休二日ですもの」

 だから、明日と明後日はお休みよ。

 クスッと小さな笑みを浮かべた後、ハルコはそう付け足した。

「ああ、そうなんですか…お休みなんで…」

 え?

 メイは、自分でそれを繰り返しながら、はたと口を止めた。

「ええー! お休みなんですか?」

 そして、今頃驚いてしまった。

 いろんなことが、一瞬で頭の中に巡ってしまったのである。

 彼の家に来てから、ずっとハルコが毎日いてくれた。

 だから、いろんなことを教えてもらってすることが出来たし、一日という時間とのバランスを気にせずに済んだ。

 しかし、明日ハルコは休みだというのだ。

 ということは、あの家に一人きりということになるのである。

 掃除をしてもいいし、食事も作るのも、洗濯だってお風呂掃除だって構わないが―― そういうこと以外を、まだ彼女は学んでいないのである。

 トラブルや不可解なことに頭をぶつけた時に、どう対処すればいいのか。
 ましてや、昼間に時間なんか余ってしまったら、何をすればいいのだろう。

 いきなりあの家の週末という、大きな海の中に放り出された気分になった。

「ええ、そうよ…あとは祝日もお休み。普通の会社みたいね」

 赤信号で止まって、ハルコがこっちを向いてきた。

 メイは、まだ呆然から帰ってきていないというのに。

「だって…でも…」

 入社したばかりの会社で、いきなり先輩が休みになって、自分一人で職場にいなければならないような、そんな不安感。

「あら、大丈夫よ。週末は食事の支度とお風呂の掃除くらいだけでいいんじゃないかしら。また月曜日に一緒にしましょう?」

 ゆっくり休んでもいいのよ。

 と、ハルコは気軽に言いながら、車を発進させた。
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