冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 そんな。

 食事の支度とお風呂の掃除だけなんて、すぐに終わってしまう。

 食事の支度をじっくりゆっくりやれば別だろうけれども、それでも時間が余ってしまうのは間違いないだろう。

 一日という時間をもたせられそうにない。

「だから、あなたが明日や明後日に材料に困らないように、食事の買い物をしていかなくちゃね」

 一緒に来てくれて助かったわ。

 混乱するメイをよそに、ハルコが言葉を続ける。

 彼女が言うには、あの家の冷蔵庫には、カイトが時々開けて食べられるような、日持ちのするようなものしか入れてなかったらしい。

 仕事は不規則で、本人もきまぐれだから、生物など入れられないのだ。

 シュウに関して言えば、冷蔵庫を開けたこともないのではないか、という話だった。

 そうかもしれないと、メイも思った。

 しかし、そんなことに悠長に思いを馳せているヒマはない。

「どうしよう…」

 助手席で、彼女は考え込んだ。

 明日という一日の使い方に、こんなに戸惑ったのはきっと初めてだった。

「カイト君は…」

 ハルコが、ふっと彼の名前を出したので、ドキッとして思考を止めてしまった。

 名前を誰かの口で綴られるだけで、こんな状態になってしまうのだ。

 ハートの占有率が、昨日よりも上がったせいに違いない。

「あの会社も一応週休二日だけれども、カイト君は…どうするのかしらね」

 女シャーロックホームズのように、ハルコは考える声で言った。

 ええー!!!!

 またも、メイは悲鳴だ。

 今度は、心の中だけで済んだけれども。

 カイトまでも、あの家に一日中いるなんて考えたこともなかった。

 そんな日は、いままでなかったからだ。

 朝と夜に会うだけの生活だった。

 一週間というのは、こんなに週末にいきなり大きな変化を遂げるものなのだ。

 働いていた時は、ただお休みの日でしかなかったものなのに。
< 353 / 911 >

この作品をシェア

pagetop