冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「大体、土曜日でも出勤することが多いから…明日も出勤するのかしらね」

 ふふっ。

 最後に意味深に笑いながら、ハルコはすごく楽しそうな唇になった。

 ああ、そうしてもらえたら。

 メイは、少し気が楽になった。

 明日も出勤してもらえたら、昼間の時間をちゃんと使えそうな気がしたのである。

 勿論、一緒にいたいという気持ちもあった。

 けれども、ずっと一緒にいる時のことを、全然シミュレーション出来ないのだ。
 何分かおきに、怒鳴られるだけのような気がする。

 うまく交わす言葉も見つけられないような気がした。

 まあ、たとえカイトが家にいたとしても、どこかに出かけることだってありえるのだ。

 昼過ぎまで寝るかもしれない。

 部屋から、そんなに出てこないかも。

 そうしたら、掃除をすることは出来るかも。

 彼の部屋は無理でも、それ以外のところくらいなら。

 まだ、本格的に掃除をしきれていないところがあるので、そういうところを中心にやっていれば、一日というのは意外と簡単に終わってしまうのかも。

 メイは、明日という日の可能性をいろんなパターンで考えた。

「と、とりあえず…今夜聞いてみます」

 戸惑いながらも、ハルコに何とかそう返した。

 カイトがいるかいないかで、彼女の一日は大きく様変わりをするだろう。

 それが分からないことには、明日何をしたらいいのかうまく判断できそうになかったのだ。

「そうね、そうしてみるといいわね」

 うふふ。

 楽しそうなハルコをよそに、何も決まっていない明日を目の前に置かれて、彼女は不安につつまれていたのだった。


 決まっている未来は―― 今夜、カレーということだけ。
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