冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
脱衣所の床には、引き出しの中のものがひっくり返されていたのである。
タオルだの、シャツだの男物の下着だのが散乱していた。
それでもまだ飽き足らないらしく、カイトは次の引き出しを引っぱり出すと、床の上で逆さまにして放り捨てるのだ。
あ……何?
頭が、またパニックになる。
彼の行動が読めないせいだ。
メイの着ていた毛皮は、もうその衣服の山の下の方に、ちらっと端だけしか見えていない状態だった。
「クソッ……」
服の山をかき回しながら、カイトが舌打ちをする。
また――怒ってる。
いつも、彼は何かに怒ってるような気がした。
それとも、メイが怒らせてしまっているのだろうか。
分からないまま、まばたきもせずに彼の作業を見つめてしまう。
「しょうがねー……」
はぁっと大きなため息をついて、カイトは山の中からシャツを掴み取った。
その、顔が上がる。
グレイの目が。
自分を映した時――驚いたように、彼は時を止めた。
まさか、メイに見られていると思わなかったのだろう。
そのまま、しばらく硬直していて。
視線は、彼女の顔の上で止まっている。
自分の目の奥深くと覗かれているような気がして、慌てて目をそらした。
すると、彼も我に返ったようで。
「ほら!」
強い声に呼ばれて、またカイトの方を見なければならない。
メイは、おそるおそる顔を上げた。
その目の前には、水色のシャツが突き出されていたのだ。
彼自体は、そっぽを向いた状態で。
ひどい仏頂面だった。
「あの……」
シャツを眺める。
それから、カイトを。
「早く着ろ!」
一秒でも耐えられないかのような早口で、それを言う。
着ろって……。
シャツを渡されてそう言われるということは、答えは一つだ。
それくらい、メイにだって分かる。
分からないのは、何故か、ということだ。
脱衣所の床には、引き出しの中のものがひっくり返されていたのである。
タオルだの、シャツだの男物の下着だのが散乱していた。
それでもまだ飽き足らないらしく、カイトは次の引き出しを引っぱり出すと、床の上で逆さまにして放り捨てるのだ。
あ……何?
頭が、またパニックになる。
彼の行動が読めないせいだ。
メイの着ていた毛皮は、もうその衣服の山の下の方に、ちらっと端だけしか見えていない状態だった。
「クソッ……」
服の山をかき回しながら、カイトが舌打ちをする。
また――怒ってる。
いつも、彼は何かに怒ってるような気がした。
それとも、メイが怒らせてしまっているのだろうか。
分からないまま、まばたきもせずに彼の作業を見つめてしまう。
「しょうがねー……」
はぁっと大きなため息をついて、カイトは山の中からシャツを掴み取った。
その、顔が上がる。
グレイの目が。
自分を映した時――驚いたように、彼は時を止めた。
まさか、メイに見られていると思わなかったのだろう。
そのまま、しばらく硬直していて。
視線は、彼女の顔の上で止まっている。
自分の目の奥深くと覗かれているような気がして、慌てて目をそらした。
すると、彼も我に返ったようで。
「ほら!」
強い声に呼ばれて、またカイトの方を見なければならない。
メイは、おそるおそる顔を上げた。
その目の前には、水色のシャツが突き出されていたのだ。
彼自体は、そっぽを向いた状態で。
ひどい仏頂面だった。
「あの……」
シャツを眺める。
それから、カイトを。
「早く着ろ!」
一秒でも耐えられないかのような早口で、それを言う。
着ろって……。
シャツを渡されてそう言われるということは、答えは一つだ。
それくらい、メイにだって分かる。
分からないのは、何故か、ということだ。