冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
じっと見つめる。
カイトの口の中には、まだスプーン。
そのまま、彼は数度まばたきをした。
何もかも分からなくなりました、というようなほけっとした顔だ。
スプーンが、口からカレーに戻った。
一瞬、メイはそれに目を奪われた。
「うめぇ…」
ぽろっと。
そんな感じでこぼれた声。
え?
彼の指先から、ぱっと視線を上げる。
その顔が、はっと我に返ったのが分かった。
ふいっと横をむく顎。
いま自分が言った言葉を、快く思っていない頬。
わざと釣り上げた眉で、メイを威嚇するけれども、威力なんて全然なかった。
うそ、うそー!!!
合格どころではないセリフだった。
怒鳴りなんかでコーティングされる前の、裸のカイトの声と表情だった。
それを、カレーが引っぱり出してくれたのである。
嬉しいどころの話ではなかった。
一生懸命タマネギを炒めてよかった、とメイは手抜きしなかった自分を、ちょっとだけほめてあげる。
嬉しさに引きずられて、彼女もカレーを口にする。
あれ?
まばたきをした。
カイトと同じように、一瞬呆然としてしまったのだ。
カレーが、おいしかった。
自分が最初に味見をした時よりも、もっと。
きっと――カイトが心からおいしいと言ってくれたから。
魔法までかけてしまう人だった。
じっと見つめる。
カイトの口の中には、まだスプーン。
そのまま、彼は数度まばたきをした。
何もかも分からなくなりました、というようなほけっとした顔だ。
スプーンが、口からカレーに戻った。
一瞬、メイはそれに目を奪われた。
「うめぇ…」
ぽろっと。
そんな感じでこぼれた声。
え?
彼の指先から、ぱっと視線を上げる。
その顔が、はっと我に返ったのが分かった。
ふいっと横をむく顎。
いま自分が言った言葉を、快く思っていない頬。
わざと釣り上げた眉で、メイを威嚇するけれども、威力なんて全然なかった。
うそ、うそー!!!
合格どころではないセリフだった。
怒鳴りなんかでコーティングされる前の、裸のカイトの声と表情だった。
それを、カレーが引っぱり出してくれたのである。
嬉しいどころの話ではなかった。
一生懸命タマネギを炒めてよかった、とメイは手抜きしなかった自分を、ちょっとだけほめてあげる。
嬉しさに引きずられて、彼女もカレーを口にする。
あれ?
まばたきをした。
カイトと同じように、一瞬呆然としてしまったのだ。
カレーが、おいしかった。
自分が最初に味見をした時よりも、もっと。
きっと――カイトが心からおいしいと言ってくれたから。
魔法までかけてしまう人だった。