冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●83
 2階は相変わらず静かだ。

 よかった、まだ眠ってるのね。

 メイはホッと胸をなで下ろす。犬があんまり吠えるものだから、あれで起きてしまったんではないかと思って心配だったのだ。

 朝の10時だ。

 犬の吠え声で起こしてしまうのも可哀相だったし、彼女の方も、まだ全然掃除が済んでいないのだ。

 それに、この格好を見られたら、また怒鳴られるかもしれない――そんな予感があったのだ。

 実はそれは考えすぎで、本当は何の問題もないのかもしれない。

 作業服姿なメイを見ても、何も思わないかもしれない。

 けれど、この姿を見られるのは、オトメとしてちょっと恥ずかしいところはあった。

 起きてきたら、着替えよっかな。

 彼女は、ちょっと自分の姿を見やった。

 調子に乗って掃除をしているので、すでにジーンズの膝はいい感じに汚れていた。

 でも、これはジャブジャブ洗濯しても大丈夫なものなのである。

 その事実は、ちょっと嬉しかった。

 さて。

 まだまだ磨くところはたくさんあるのだ。

 月曜日に来たハルコに、『まあ、綺麗になったわね』と言ってもらえるように頑張ろうと、そんな空想をしながら掃除の続きに取りかかったのだった。
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