冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 確かにメイは、ここに来る前にはランパブにいた。

 見られたくない人にだって、見られてしまうようなあざとい露出の激しい格好で。

 だからと言って、そんな姿に慣れているワケではないのだ。

 誰に見られても平気というワケでは決してなかった。

 あぁ。

 メイは目を伏せた。

 何を考えているのかと思ったのだ。

 この人になら――いいのだ。

 この人ならイヤじゃないのだ。

 たとえ、どんな気持ちでその言葉を言っていたとしても、カイトになら。

 ちょっとだけ瞼が熱くなった。

 でも、胸のどこかが悲しがっているのだ。

 カイトへの気持ちを抱きしめて、この事実がどこか嘘ではないのかと、彼はそんな人ではないと叫んでいるのだ。

 それを押し殺して、くるりとカイトに背中を向けた。

 震える指で。

 トレーナーの裾に触れた。
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