冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
イヤなのか。
何でイヤなんだよ。
廊下に出る、階段を上がる。また廊下を歩く。
ドアの前で足を止める。
ドアを開ける。中に引っ張り込む、ドアを閉めて振り返る。
そして言った。
「脱げ」
脱げ! んな服、とっとと脱げ!
心の中には、もっと強い悲鳴が隠されていた。
けれども、カイトはその炎の一部を、唇の内側からひらめかせただけに押さえた。
まだ身体のどこかが、メイにセーフティをかけているのだ。
忌々しいことに、彼女に嫌われたくないという気持ちの石が、胸の中で光っていたのである。
だから、そんな悲鳴を押し殺せた。
メイが、自分を見た。
何度か瞬きをしながら、でもじっと見つめるのだ。
一瞬、茶色の目の中が揺れた。
その次の瞬間、彼女は背中を向けて―― トレーナーに指をかけた。
カイトは、ばっと後ろを向いた。
その向いた先にあったものに気づく。
そこへ近寄って、許可もなく勝手に開けた。
普通なら、失礼どころの話ではない。
たとえ、ここが彼の家であって、彼女に貸しているだけの部屋であったとしても、かなり酷いことをしたのだ。
女性の――クローゼットを、勝手に開けたのである。
洋服がぶらさがっていた。
見たこともないのもあったが、多分、どれもハルコが買ってきたものに違いない。
カイトは、何でもいいから勝手に掴みだした。
どれとどれをどう組み合わせて着るかなんか知らないし、考えてもいない。
とにかく、手当たり次第に掴んだのだ。
あの忌々しい服は捨てて、彼女を綺麗にしたかった。
いや、いまのメイが綺麗じゃないというワケではない。
でも、イヤなのだ。
あの格好をしている限り、カイトの近寄れないバリアが張ってあるような気がした。
彼以外を選び続けるメイが、見えるような気がしたのだ。
適当に掴みだした服を持って―― しかし、カイトは彼女の方を見てしまった。
イヤなのか。
何でイヤなんだよ。
廊下に出る、階段を上がる。また廊下を歩く。
ドアの前で足を止める。
ドアを開ける。中に引っ張り込む、ドアを閉めて振り返る。
そして言った。
「脱げ」
脱げ! んな服、とっとと脱げ!
心の中には、もっと強い悲鳴が隠されていた。
けれども、カイトはその炎の一部を、唇の内側からひらめかせただけに押さえた。
まだ身体のどこかが、メイにセーフティをかけているのだ。
忌々しいことに、彼女に嫌われたくないという気持ちの石が、胸の中で光っていたのである。
だから、そんな悲鳴を押し殺せた。
メイが、自分を見た。
何度か瞬きをしながら、でもじっと見つめるのだ。
一瞬、茶色の目の中が揺れた。
その次の瞬間、彼女は背中を向けて―― トレーナーに指をかけた。
カイトは、ばっと後ろを向いた。
その向いた先にあったものに気づく。
そこへ近寄って、許可もなく勝手に開けた。
普通なら、失礼どころの話ではない。
たとえ、ここが彼の家であって、彼女に貸しているだけの部屋であったとしても、かなり酷いことをしたのだ。
女性の――クローゼットを、勝手に開けたのである。
洋服がぶらさがっていた。
見たこともないのもあったが、多分、どれもハルコが買ってきたものに違いない。
カイトは、何でもいいから勝手に掴みだした。
どれとどれをどう組み合わせて着るかなんか知らないし、考えてもいない。
とにかく、手当たり次第に掴んだのだ。
あの忌々しい服は捨てて、彼女を綺麗にしたかった。
いや、いまのメイが綺麗じゃないというワケではない。
でも、イヤなのだ。
あの格好をしている限り、カイトの近寄れないバリアが張ってあるような気がした。
彼以外を選び続けるメイが、見えるような気がしたのだ。
適当に掴みだした服を持って―― しかし、カイトは彼女の方を見てしまった。