冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ちょうど。

 すとん。

 スリップを、床に落とすところだった。

 彼女の身体をなぞるように、白い軌跡が視線を縦によぎっていく。

 綺麗な白い背中。

 上下の下着だけの、もうほとんど全裸と言っても過言ではないほどの、小さな下着が二つだけのメイの後ろ姿だ。

 カイトは硬直した。

 メイの指が。

 その上の下着とやらについている、背中の留め金にかかったからである。

 窮屈な角度で、でも指先は確実に任務を遂行しようとしていた。

 ハッ!

 カイトは頭の中の警報が聞こえた。

「バッ! バカ野郎! 誰がそこまで脱げっつった!」

 ジャッッッ!

 対メイ用セーフティの、大きなジッパーが一気に閉じられた合図だった。

 キレていた時の怒りがすっ飛んで、彼女にそれ以上の行動を止めさせるという緊急用モードに変更されたのだ。

「え?」

 止まった指。

 肩越しに振り返るメイの目――と、ばちっと視線がぶつかってしまう。

 カァっと血が巡った。

 キレがすっ飛んでしまったカイトは、ようやく今が、とんでもない事態であることに気づいたのである。

 彼女にその服を脱がせたかったとは言え、こんなところまで乗り込んで、脱げと命令した自分を、初めて一瞬だけ客観的に見てしまったのだ。

 いわゆる。

 我に返るというヤツである。

 彼女のセミヌードを見るまで、頭に血が昇りきっていたのだ。
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