冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 あ。

 犯人もその犯行経過も、火を見るより明らかである。

 カイトが、それをそこに突っ込んだのだ。

 後で、こっそり拾っておかなくちゃ。

 カイトの前では、絶対に着られない衣装であることは分かったけれども、彼女にとっては必要なものであった。

 ごめんなさい。

 彼の部屋のドアに、ちょっとだけ頭を下げて―― ほとぼりが冷めた頃に回収しようと、心に誓ったのだった。

 階段を降りると、車の音が聞こえた。

 あれ?

 この家には、車は一台しかない。もう一台はバイクだ。

 車は、朝多分シュウという人が乗って出ていったのだろう。

 ガレージを見た時には、もうなかったから。

 お客様かしら、と思いながら階段を降りている。

 調理場の方に行こうかどうしようかと、うろうろしていると、そのうち勝手にドアが開いた。

 目が合う。

 シュウだった。

 茶封筒を持ったまま、彼は一度足を止める。

「あ、お帰りなさい」

 土曜日でお休みの日とは言え、こんなに早く帰ってくるとは思わなかった。

 けれども、さっきのあの騒ぎを見られなくて本当によかったと、ほっと胸をなで下ろす。

 彼は、しかし大きな注意を払うことはなく、そのまま自分の部屋の方に行ってしまった。

 あ。

 メイは、ぱっと視線を彼に向けた。まだ背中が見える。

「あの!」

 勇気を振り絞って声をかけると、シュウは自分のことだと分かったのか足を止めた。
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