冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「メシの最中だ」

 出て行けと言わんばかりのささくれだった声で、カイトは凄んだ。

 メイの方からどんな表情かは見えないが、おそらく間違いなく睨んでいるだろう。

「あら…」

 ハルコが、目を輝かせた。

「おや…」

 ソウマが、眉を上げた。

「お弁当がついてるぞ」
「お弁当がついてるわよ」

 夫婦、2人同時の発言だった。

 ああー!

 メイは、きゃーっっと心の中で悲鳴をあげた。

 彼女が戸惑ってしまったせいで、カイトがハジをかいてしまったのである。

 しかし、それだけじゃ済まなかった。

 分かっていないようなカイトの顔に手を伸ばしたソウマが、そのご飯つぶを取ってしまったのである。

 ぱくっと。

 カイトの背中は―― 硬直した。

「ああ…うまいメシを食わせてもらってるじゃないか」

 羨ましい限りだ、と軽やかに笑うソウマ。

「まあ、ソウマったら…」

 夫の方を、『困った人なんだから』という目で。
 しかし、楽しそうだった。

「か…」

 カイトの声は、地の底から響くようなものだった。

 メイは、ギクリとした。
 イヤな予感がしたのだ。

 反射的に、背もたれの方に身体を引いて身構えてしまう。


「帰れー!!!!!」


 窓ガラスが、ビリッと震えるくらいの大声だった。

 ギリギリのタイミングで―― メイは、耳をふさぐことが出来た。
< 428 / 911 >

この作品をシェア

pagetop