冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□93
 ブッ殺す。

 カイトの部屋のカイトのソファで、カイトは盛大に憎んでいた。

 目の前にはソウマが、アホづらでにこにこしている。

 音速の往復ビンタをかましても、同じような顔のままじゃないかと疑うほどだ。

 いま一言でもしゃべったら、絶対ぶっ殺すというオーラをバシバシ感じているのか、ソウマはその滑りのいい口を開いたりはしなかった。

 この間、カイトが台無しにした『大事な話』とやらを、休みの日にわざわざしにきたというのである。夫婦揃って。

 どんな大事な話だかは知らないが、それでも彼は2人を叩き出そうとしたのである。

 ソウマの言うことなんか、まったく信用していなかった。

 なのにハルコが、『本当に大事な話なの』とお願いする目の一斉射撃をしたものだから、結局折れてしまったのである。

 本当に、彼女は苦手だ。

 いや、もうこの夫婦自体が苦手だった。

 いま妻の方はいない。
 いるのはその旦那と自分だけである。

「お待たせ…」

 ようやくハルコが、お盆を持って入ってきた。

 女という生き物は、お茶でも用意しないと話をし始めない習慣でもあるようだ。

 信じられないかったるさだった。

 ついで、メイも入ってくる。

 おい。

 カイトは顔を歪めた。

 何故、彼女まで連れてくるのか意図が分からなかった。

「何で…」

 そこまで言いかけて、ハルコを睨む。その後で、ちらっとメイの方を見て。

「大事な話はね…ちょっと彼女にも関係があるのよ」

 いいでしょ?

 そう言われては、拒むワケにもいかない。

 ここで拒んだら、またメイに無用な誤解を招きかねなかった。

 それを先回りして考えられただけ、まだカイトは冷静ということである。
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