冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ハルコは、テーブルの上にお盆を置いた。

 コーヒーと紅茶が並べられる。

 メイはソファの側まで近付いては来たが、まだそこに立っている。

 彼女の分の紅茶は、カイトの隣の席に置かれていた。

 ハルコは、ソウマの横に座る。

 メイはまだ立っていた。

 イラッ。

 来たなら来たでしょうがないから座れ、と思うのだが―― ここで怒鳴りでもしたら、またイヤなツッコミが入るだろうことは、よく分かっていたので、ぎゅっと口を閉ざす。

「はやくいらっしゃい」

 幸い、ハルコが助け船を出してくれたので解決した。

 メイは、しばらくキョロキョロと自分の行き場を探していたが、最後はおずおずとカイトの隣の席にやってくる。

 まるで学校の校長室に呼び出された生徒のような恐縮さで、小さくなるようにソファに座った。

 彼女の体重を感じてへこむソファの余波は、カイトの方にも伝わってくる。

 ちらっと横目で彼女の位置を確認する。

 上まで見るワケではない。視線は下向きで、スカートの膝の位置を確認しただけだ。

 そんなにすぐ側というワケでもないのだが、香りとか体温まで側にあるような気がして、とにかく落ち着かなかった。

「大事な話というのは…」

 そう切り出されて、はっと前の方に顔を向ける。

 ソウマだ。

 彼はコーヒーを一口飲んで、またソーサーに戻すところだった。

「私たち2人に、プレゼントが来たんだ」

 勿体ぶった口調だ。

 マジシャンが、美女を忽然と消した箱を開けて見せる時のような、そんな感じ。

 ソウマは、ステッキを持ってはいなかったが。

「あぁ?」

 怪訝に眉を顰めた。

 そういう言葉遊びは嫌いなのだ。

 とっとと用件だけを簡潔に言え、というアピールだった。

 そして、早く『帰れ』というのが正直な気持ち。

 それが分かったのか、ソウマもハルコも同時に、にこっと笑った。

 いつもの、カイトをからかおうとする時の顔なんかじゃなかった。

 もっと違う顔。
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