冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「出来たんだよ」

 ソウマ。

「何が?」

 不審な目のカイト。

「子供さ」

 ああそうかい。

 ……。

 ……。

 …なにー!!??

「あ…おめでとうございます」

 先にそれを言ったのは、メイだった。

 嬉しそうに目を輝かせて、ハルコの方を見る。

 つられてカイトも見てしまった。

 しかし、カイトが見ているのは―― 彼女のおなかだった。

 まだ、昔と全然昔変わっていないように見える。
 本当に、その腹の中にソウマとの子供がいるのか。

 カイトは、妊娠というものに無縁だった。

 女友達というのはハルコくらいだったし、親や親戚はいるが付き合いはまったくなかった。

 女子社員が寿退社(妊娠退社含む)をすることはあるようだったが、別にカイトが直接会うこともない。

 いまのハルコを見る限りでは、とてもじゃないが妊婦には見えなかった。

「まだ三ヶ月だから…」

 そんなカイトの食い入るような目に気づいたのか、ハルコが優しく言った。

 はっと気づいて、カイトを視線をソウマに戻す。

 こいつがオヤジに。

 今度は、それを思う番だ。

 2人は結婚しているワケだから、いつかそういう日が来ても全然おかしいことはなかったのだが、こうやって改めて考えたことなどなかった。

「男だったら一緒に山歩きをするぞ。女の子だったら…ヨメには出さないがな」

 はっはっは。

 笑うソウマに、カイトはあんぐりと口を開けた。

 こんなベタすぎな発言を、本気で彼がするとは思ってもみなかったのである。

「まあ、ソウマったら」

 ふふ。

 ヨメさんも、まったくそんなソウマに動じている様子はない。

 微笑みに輪がかかるだけだ。
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