冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 いま、ハルコがまったく来なくなってしまったら―― 本当に、ちゃんとやっていけるかどうか不安だった。

「あのっ! 私、一生懸命お手伝いします。ちゃんと一人でもこの家のことが、何でも出来るように頑張りますから!」

 だから、カイトに訴えた。

 ご飯を認めてくれたのである。

 彼が認めてくれたのは、おいしいと思ってくれたからだろうか。

 それなら、掃除だって綺麗に出来るようになったら、容認してくれるかもしれない。

 食事を作る時みたいに、怒らなくなってくれるかもしれないと、メイは思ったのだ。

 しかし、振り返ったカイトの顔は、『おめーは何を言い出すんだ!』というような色をしていた。

 その驚きの顔が、みるみる険しく変化した。

「ダメだ、ダメだ、ダメだっっっっ!!」

 ダメのバルカン砲。

 その怒鳴りに、思わず目をぎゅっとつむってしまった。

「そう、頭ごなしに言うこともないだろう…まったく、お前は」

 苦笑するソウマの声で、ようやく彼女は目を開けることが出来た。

 しかし、今度はテーブルの向こうに食ってかかるカイトがいた。

「人ん家の事に、口出し、してくんじゃ、ねー! すっこんでろ!」

 一単語ずつ、指で突きつけながら怒鳴るのだ。

 ソウマの眉が上がる。

 2人の間に険悪な空気が流れて、それはメイをオロオロさせた。

「それじゃあ、私はこれからどうすればいいのかしら?」

 男2人の問答ではラチが開かないと思ったのか、ゆっくりしたハルコの言葉が割って入る。

 一番の当事者である。

 さすがに、彼女には説明をしないワケにはいかないだろう。

 カイトは、ぷいと横を向いた。

「…今まで通りに来い」

 ぼそっと。

 あんまり大きな声で言えなかったのは、ハルコが妊婦であることを知ったせいか。

 しかし、発言内容は説明的ではなかった。
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