冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「毎日は無理よ」

 カイトを刺激しないような言葉を選べるのは、さすがは元秘書である。

 頭ごなしに文句を言うのではなく、外側から攻めていくのだ。

「…来られる時だけでいい」

 もう一度、ぼそっと―― しかし、前よりも眉間のシワを深くしながら言った。

 おや、とソウマが言った。

 あら、とハルコも言った。

 え? と、メイも思った。

 3人して黙り込んで、いま彼の言った言葉を理解しようとしたのだ。

 その後、メイ以外の二人は、物言いたげな視線を交わしていた。

 誰も見る相手のないメイは、とりあえずはカイトの方を向き直る。

 いまの発言を組み立て直そうとするのだが、彼女はうまくそれが出来なかった。

「それじゃあ、さっき彼女が提案した内容と一緒じゃないのか?」

 ソウマは、ついにそれを言った。

 そうなのだ。メイもそんなことを思ったのだ。
 うまく言葉にしてくれる人がいてよかった。

 ハルコに来られる時だけ来てもらおう、というのが最初の提案で。

 それをカイトはダメだと言った。

 しかし、聞いてみれば答えは一緒なのだ。

 結果オーライではあるのだが、彼女は全然納得できなかった。

 あんなにも、彼がムキになって拒絶する理由が、別にあるはずだったのだ。

「とにかく…来られるだけ来い」

 カイトは、もうこれ以上聞くなとでも言うかのように、語尾をスタンと切り落とした。

 彼の感情はどうあれ、メイの主張が通ったのだ。

 それは喜ぶべきことである。釈然としないながらも、彼女は目を輝かせた。

「私…頑張ります!」

 メイは、強くそれを主張した。容認してくれてありがとうございます―― の気持ちをいっぱいに詰めて。

 しかし、もう一度彼女の方を見た目は、予想を反していた。

「おめーは…!」

 カイトは何かを怒鳴りかける。

 けれども、その表情がハッと我に返ったかのように口にストップをかけて、勢いよく顔をそらした。

 あっ。

 怒鳴りを途中でやめられてしまって、メイは戸惑った。
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