冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 わずかな情報が組み込まれているそれすら、カイトの口から止められてしまったら、もっともっと彼の存在が理解できなくなってしまう。

 追いすがるように見たが、カイトはもう彼女の視界にワザと入れないくらい向こうを睨んでいた。


「おめーは、何もしなくていいんだよ!」


 え?

 メイは、その声にビックリした。

 大きな目を見開いた後、二度ほどまばたきをして顎を動かした。

 カイトの方に―― ではない。

「…って、言いたいのか?」

 クックック。

 耐えられないように、肩を震わせて笑っているソウマの方だった。

 わざわざ、カイトの口真似までして見せたのだ。

 さすが付き合いが長いだけのことはある、と感心している場合ではないのだが。

「まあ、そうだったの…だから、最初の要求はダメだったのね」

 クスクス。

 口元を押さえてハルコが微笑む。

「私がやめてしまうと、彼女に負担がかかるから…だから『やめるな』って言ってくれたのかしら?」

 そうだったら、ちょっと寂しいわね。

 ハルコは、マシュマロを踏んでいくように、微笑みに声を弾ませながら、どんどん続けた。

 カイトは、わなわなと唇を震わせながら彼女の方を向く。
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