冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
バターン!
カイトは、玄関の目の前にバイクを止めるなり、そのドアを力一杯開けた。
軟弱住宅のドアなら、根本からイカレそうな勢いで。
びくっ、と足を止める。
メイがいたのだ。
すぐそこに立っていて、彼の存在を確認するや目を細めて。
それ以前に、目が―― 真っ赤だった。泣き腫らしていたのだ。
「おか…なさい」
慌ててその顔を隠すように下を向いて。
メイは、絞り出すような小さな声で言った。
刺さる。
「よかった…」
刺さる。
「もう……かと」
全身が。
針山になった気分だった。
あの小さく細い針が、身体全体に突き刺さる。
まるでカイト自体が磁石であるかのように吸い寄せられてきて、ヒュンっと。
言葉も出なかった。
その場に立ちつくすしかなかった。
家を飛び出したのが昼過ぎ。
それからいままで、何時間もカイトの帰りを待っていたのではないかと、不安な思いをしていたのではないかという想像が、彼をハリネズミにするのだ。
ただし―― とがった針の先は、すべて彼の方を向いて刺さっていたけれども。
「す、すみません…ご飯にしましょう」
ゴシゴシと一生懸命顔を拭いて、メイは顔を上げた。
そうして、笑顔を作りながら言うのだ。
心を切り替えるかのように、声音まで変えて。
バターン!
カイトは、玄関の目の前にバイクを止めるなり、そのドアを力一杯開けた。
軟弱住宅のドアなら、根本からイカレそうな勢いで。
びくっ、と足を止める。
メイがいたのだ。
すぐそこに立っていて、彼の存在を確認するや目を細めて。
それ以前に、目が―― 真っ赤だった。泣き腫らしていたのだ。
「おか…なさい」
慌ててその顔を隠すように下を向いて。
メイは、絞り出すような小さな声で言った。
刺さる。
「よかった…」
刺さる。
「もう……かと」
全身が。
針山になった気分だった。
あの小さく細い針が、身体全体に突き刺さる。
まるでカイト自体が磁石であるかのように吸い寄せられてきて、ヒュンっと。
言葉も出なかった。
その場に立ちつくすしかなかった。
家を飛び出したのが昼過ぎ。
それからいままで、何時間もカイトの帰りを待っていたのではないかと、不安な思いをしていたのではないかという想像が、彼をハリネズミにするのだ。
ただし―― とがった針の先は、すべて彼の方を向いて刺さっていたけれども。
「す、すみません…ご飯にしましょう」
ゴシゴシと一生懸命顔を拭いて、メイは顔を上げた。
そうして、笑顔を作りながら言うのだ。
心を切り替えるかのように、声音まで変えて。