冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「でもも、ヘチマもねぇ! 寝ねーと犯すぞ!」

 余りに過激な返事が返ってくる。

 シャレにならない。

 メイは、ビックリしてベッドの中に潜り込んだ。

 そのまま、毛布の中で丸くなる。

 さっきの彼の言葉が実践されるんじゃないかと思って、気配を殺していたけれども、ソファの方は全然動かない。

 でも、彼の気配はそこに確かにあるのだ。

 自己主張をする匂いのようなものを、カイトは持っていた。

 それが、暗がりでも何となく分かって。

 だから――さっきのセリフが、ただの脅しであることを知ったのである。

 でも……何故?

 今日は『何』ばかりだ。

 いきなりベッドを明け渡されたからといって、ホイホイ眠れるハズもない。

 まだ、身体中がいろんな緊張や興奮や疑問を抱えているのである。

 時計を見てはいないが、もう随分遅いはず。
 夜明けの方が近いかも。

 それでも、メイは全然眠くなかった。

 いつもなら、12時を回ればうつらうつらしてしまう生活をしていたのに。

 とてもじゃないけれども、寝つけそうになった。

 彼が、そこにいるのに――それも大原因だったが。

 解けない疑問の糸を相手に、うまく綾取りもできないメイは、そっと吐息を洩らした。

 シャツの胸に息が当たった。

 そのシャツの胸に、触る。

 下着をつけていないのだ。

 ダイレクトにその柔らかさが伝わる手のひらを、別のものが一つ叩いた。

 トクン、と。

 あの人は。

 メイは、目を伏せる。

 トクン。

 カイトって人は。

 トクントクン。

 一体……どういう人なの?

 トクン。

 名前を思った時だけ、手のひらが二回鼓動で叩かれた。
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