冬うらら~猫と起爆スイッチ~
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ムキになって追い払いながら、彼は書類をめくった。
そっちに集中しようとしたのだ。
自分にとって信じられないことをさせてくれた、忌まわしいケイタイを机の隅に放って、斜め読みに入るのだ。
『社長、副社長がお見えです』
タイミングとしてはよかったのか―― 悪かったのか。
少なくとも、電話の最中でなかったことだけは幸いだったか。
カイトは、フォンの声に顔を上げた。
ドアが開くところだった。
「お疲れさまです…」
入ってきたシュウの手には、新しい書類の束。
カイトはそれを見て、やる気ゲージをまた下げてしまった。
「今回は、これで最後です」
副社長様とやらは、そうして机の上にその束を置く。
「今度から、メール決済にしろ」
自分の目の前に積んである山を、げんなりと押しやりながら、カイトは唸った。
これとネクタイ仕事さえなければ、社長をやっていても別に問題はないのに。
いや、それでは一般開発社員と、何ら仕事が変わらなくなってしまうか。
「そんなことをしようものなら、自動チェックソフトを作って、それに決済させるに違いないでしょう」
しかし、シュウはまったく取り合う様子もない。
言っていることは極端にしても、外れていないことも確かである。
カイトに社長仕事をさせるには、デジタルから引き剥がしてアナログの土俵に持ち込まなければいけないのだ。
ムスッと黙り込んで、カイトは仕事をとにかく終わらせようとした。
言い争っている間に、無駄な時間が費やされることに気づいてしまったのである。
そんな彼を見やって―― しかし、シュウは出ていこうとしない。
「何だ?」
ギロッと書類から睨み上げる。
おとなしく書類仕事をしてやっているのだ。
これ以上、機嫌を壊す真似をされたくなかった。
「実は…」
シュウは、ふーっと息を吐きながら切り出そうとした。
「実は、アオイ教授から電話がありまして…」
そこから先は、全部聞かなくても分かった。
ムキになって追い払いながら、彼は書類をめくった。
そっちに集中しようとしたのだ。
自分にとって信じられないことをさせてくれた、忌まわしいケイタイを机の隅に放って、斜め読みに入るのだ。
『社長、副社長がお見えです』
タイミングとしてはよかったのか―― 悪かったのか。
少なくとも、電話の最中でなかったことだけは幸いだったか。
カイトは、フォンの声に顔を上げた。
ドアが開くところだった。
「お疲れさまです…」
入ってきたシュウの手には、新しい書類の束。
カイトはそれを見て、やる気ゲージをまた下げてしまった。
「今回は、これで最後です」
副社長様とやらは、そうして机の上にその束を置く。
「今度から、メール決済にしろ」
自分の目の前に積んである山を、げんなりと押しやりながら、カイトは唸った。
これとネクタイ仕事さえなければ、社長をやっていても別に問題はないのに。
いや、それでは一般開発社員と、何ら仕事が変わらなくなってしまうか。
「そんなことをしようものなら、自動チェックソフトを作って、それに決済させるに違いないでしょう」
しかし、シュウはまったく取り合う様子もない。
言っていることは極端にしても、外れていないことも確かである。
カイトに社長仕事をさせるには、デジタルから引き剥がしてアナログの土俵に持ち込まなければいけないのだ。
ムスッと黙り込んで、カイトは仕事をとにかく終わらせようとした。
言い争っている間に、無駄な時間が費やされることに気づいてしまったのである。
そんな彼を見やって―― しかし、シュウは出ていこうとしない。
「何だ?」
ギロッと書類から睨み上げる。
おとなしく書類仕事をしてやっているのだ。
これ以上、機嫌を壊す真似をされたくなかった。
「実は…」
シュウは、ふーっと息を吐きながら切り出そうとした。
「実は、アオイ教授から電話がありまして…」
そこから先は、全部聞かなくても分かった。