冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●101
 受話器を置いたメイは、9時くらいまで彼を待ってしまった。

 あと10分だけ待ってみよう、あと5分だけ、あとちょっと―― そんな風に待っていたら、9時なんてあっという間だったのだ。

 これ以上、食事をせずに待っているところが見つかったら、きっとまた怒鳴られるのではないかと思い、しょうがなく食事を始める。

 お仕事…忙しいのね。

 そんなにおなかが空いていると感じなかった。
 おいしいとも思えなかった。

 静かすぎて気味が悪いくらいだ。

 思えば、この家に来てから一人きりで夕食を取るということはなかった。
 これが初めてだ。

 いつも、カイトがそこにいて。

 向かいの席を見る。

 ラップをかけた彼の分の料理が置いてあるだけだ。

 ちゃんと、気づいてくれるかな。

 帰ってきて、ちゃんとここで食事を取ってくれるだろうか、と心配しているのである。

 もし気づいたとしても、温め直したり―― しないだろう。

 そう思うと、気がかりでしょうがなくなる。
 どうせなら、おいしく食べて欲しかったのだ。

 バカみたい。

 慌てて、メイは自分の思考の流れをうち切った。

 外で食べて来るのかもしれない。

 こんなに遅くまでの仕事なのだから、それくらいありえる。

 それに、カイトは子供というわけではないのだ。

 ちゃんといままで生きてきた男の人に、そこまで手をかけて構う必要はないのに。

 でも、気になるのだ。

 しょうがない。

 それが、恋とかいう代物なのだから。

 後ろ髪を引かれながらも、後かたづけを終えて部屋に戻る。

 10時になった。

 お風呂に入る。

 11時になった。
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