冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 車が入ってくる音がしたので見に行ったら、シュウが帰ってきたところだった。

 階段を降りてきたところで、カイトがいないことが分かる。

 彼は、ちらりとメイを横目で映しただけで、自室の方へ向かってしまった。

 まだなのね。

 彼にお帰りなさいも言い損ねたことに気づかないくらい、自分が落胆しているのが分かった。

 でも、シュウが帰ってきたのだから、カイトだってそんなにもう遅くないはずだ。

 そう確信して、階段のところに座り込んだ。

 廊下はシンと冷えているので、手足もお尻もすっかり冷えるくらいまで待ったけれども、彼は帰ってこない。

「クシュン!」

 そのクシャミが、タイムリミットを告げていた。

 ここで、もし風邪でもひいてしまったら、明日から余計に迷惑をかけてしまうと思ったのだ。

 しょうがなく、彼女は部屋に戻った。

 布団の中にもぐりこんで電気を消す。

 しかし、眠くなかった。

 丸くなって体温を取り戻しながら、ずっと気配を外に向けていた。

 バイクが帰ってくる音を拾おうと思ったのだ。

 そうしている内に、布団の中でだんだん身体があったかくなる。

 あったかくなったら、意識がトロンと―― すぅーっっ。

 メイの意識は、地下へのエレベーターに乗せられてしまった。
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