冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 はっ!

 彼女はビックリして飛び起きた。

 いま、自分が眠っていた事実に、いきなり気づいたのである。

 がばっと布団から起きると、方向の定まらない手で枕元の電気をつける。

 目をしばたかせながら時計を見た。

 1時半だった。

 カーディガンに袖を通しながら、メイはベッドを降りて部屋を出た。

 もう帰ってきて眠っているかもしれないカイトの部屋の前を、そぉっと通り過ぎ、階段を駆け下りる。

 目標は、ダイニングだった。

 通りすがりに電気をつけながら進む。
 でないと、怖くてしょうがないからだ。

 しかし、暗いのが怖いからと言って、行動を明日の朝へ延ばせなかった。

 ラップをかけられた料理の行方が、気になってしょうがなかったのだ。

 ダイニングのドアを開けて、手探りで電気をつけて。

 迷うことなく、カイトの席を見る。

 あっ。

 寒さにも関わらず、全身がほーっと安堵したのが分かった。

 テーブルの上が空っぽだったのである。

 置いていた皿がなかったのだ。

 しかし、何もないワケではない。

 メイが近寄ってみると、テーブルの上にはキャベツの千切りの破片や、フライの衣の破片が落ちているのだ。

 間違いなく、カイトが食べた証拠である。

 シャーロックホームズのような気分で、その様子を確認した後、調理場の方へと進んだ。

 電気をつけると、シンクの回りは水浸しだ。

 彼が、そんなに遠い昔じゃない時間に、ここで皿を洗ったせいだ。

 それに、クスッと笑ってしまった。

 カイトが仏頂面で作業をしている姿が、目に浮かぶからだ。

 とその時、違和感のあるものが映って目を止める。

 水たまりの端の方に、銀色の何かが置いてあった。

 時計だ。

 銀色の、どう見ても男物のアナログ時計。
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