冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 チャリッ。

 カギが、耳障りな音を立てた。

 余計に不機嫌にさせられながら、彼は扉に手をかけた。

 が。

 カイトは動きを止める。

 何か気配がしたのだ。

 目を半開きにした。

 振り返る。

 しかし、誰もいない。

 気のせいか?

 カイトはそう思いかけたが、もう一度振り返ってみた。

 ちらっ。

 二階に上がる階段の踊り場の陰に、何かが翻って消えた。

 チャリッ。

 カイトの手の中でカギが鳴る。
 彼が動き出したからだ。

 足音を忍ばせて再び階段を上がって行く。

 踊り場まではすぐだ。

 たどりついて、手すりに手をかけて陰の方を見ると。

「あ…はは、おはようございます」

 ごまかしたそうに笑っているメイと目が合った。

 怒られるんじゃないかと、心配している顔だ。

 ふーっ。

 カイトはため息をついた。

 彼女のことだ。

 きっともっと前から起きていたに違いない。

 そうして、彼が出かけるのをおとなしく待っていたのだ。
 でかけたら仕事にかかろうと思って、ここまで忍び寄っていたに違いない。

 カイトが、9時より早く起きるなと昨日厳命していたせいだ。

 まったくもって言うことを聞かない女である。

 するなと言っても、全然効力がない。

 いない隙を狙われるだけなのだ。
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