冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□103
6時。
昨日の今日だ。
カイトは、針が直立不動の形になった時、がたっと席を立った。
シュウに言った通り、今は多忙という期間ではない―― 昨日のような書類日は別だが。
上着をひっ掴んで、彼はさっさと帰った。
きっともう夕食の準備は出来ていて、メイが待っているはずだった。
昨日は冷めた夕食を一人で食べた。
いや、どうしても食べたかったワケではない。
昨日帰ってきて、まさかと思ってダイニングを見ると、夕食の支度がしてあったのだ。ご丁寧にラップまでかけて。
馬鹿野郎。
それを見た時、カイトはそう呟いた。
遅くなると言ったのだから、食事の用意などしていなくてよかったのだ。
なのに、こうして準備してあると、食べなければいけないように思える。
しかし、彼女が心配に思ってくれた証のようでもあって―― その不慣れな感触に顔を顰めた。
とにかく、カイトは自分の席につくと、ラップをへっぱがしたのだ。
白身魚のフライとキャベツの千切り。
ソースもドレッシングも目の前に用意してあったにも関わらず、そのままカツカツと口の中に押し込んだ。
ご飯もよそわなかった。
とにかく、席に用意してあるものだけを食べ散らかしたのである。
全部たいらげると、余韻でまだ口を動かしながら席を立つ。
皿一枚持って、調理場に向かうのだ。
流しに皿を置いて、勢いよく水道をひねると下の皿に跳ねて、思い切り袖口を濡らした。
クソッと毒づく。
彼は、こういう台所仕事に慣れていないのだ。
しょうがなくシャツの袖をまくる、邪魔な手首の時計を外した。
本当にらしくない状態なのだが、彼女の用意してくれた夕食をムゲにしたくなかったのと、この皿を片づけさせたくなかった。
その気持ちだけが、原動力だ。
彼女がいまそこにいないからこそ、出来る仕事でもあった。
6時。
昨日の今日だ。
カイトは、針が直立不動の形になった時、がたっと席を立った。
シュウに言った通り、今は多忙という期間ではない―― 昨日のような書類日は別だが。
上着をひっ掴んで、彼はさっさと帰った。
きっともう夕食の準備は出来ていて、メイが待っているはずだった。
昨日は冷めた夕食を一人で食べた。
いや、どうしても食べたかったワケではない。
昨日帰ってきて、まさかと思ってダイニングを見ると、夕食の支度がしてあったのだ。ご丁寧にラップまでかけて。
馬鹿野郎。
それを見た時、カイトはそう呟いた。
遅くなると言ったのだから、食事の用意などしていなくてよかったのだ。
なのに、こうして準備してあると、食べなければいけないように思える。
しかし、彼女が心配に思ってくれた証のようでもあって―― その不慣れな感触に顔を顰めた。
とにかく、カイトは自分の席につくと、ラップをへっぱがしたのだ。
白身魚のフライとキャベツの千切り。
ソースもドレッシングも目の前に用意してあったにも関わらず、そのままカツカツと口の中に押し込んだ。
ご飯もよそわなかった。
とにかく、席に用意してあるものだけを食べ散らかしたのである。
全部たいらげると、余韻でまだ口を動かしながら席を立つ。
皿一枚持って、調理場に向かうのだ。
流しに皿を置いて、勢いよく水道をひねると下の皿に跳ねて、思い切り袖口を濡らした。
クソッと毒づく。
彼は、こういう台所仕事に慣れていないのだ。
しょうがなくシャツの袖をまくる、邪魔な手首の時計を外した。
本当にらしくない状態なのだが、彼女の用意してくれた夕食をムゲにしたくなかったのと、この皿を片づけさせたくなかった。
その気持ちだけが、原動力だ。
彼女がいまそこにいないからこそ、出来る仕事でもあった。