冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 まさか、いきなり怒鳴られると思っていなかったらしく、びっくりしたメイが、トレイの上の陶器をガチャッと鳴らした。

 どうしたらいいか分からない顔で、シュウと彼を見比べるのである。

 そいつの言うことなんか聞く必要はねぇ!

 シュウとの間で揺れ動かれると、余計に怒りが倍増するのだ。

「私がお願いしました」

 しかし、彼の方は全然悪びれる様子はない。

 カイトの怒鳴りを緩和させようという気だろうが、役目は全然果たしていなかった。

「んなこたぁ、最初から分かってんだよ! おめーは、こいつにそんなことを言う権利なんかねーんだ!」

 アオイへの怒りも忘れて、眼鏡野郎に指を突きつける。

 何かカンチガイしているなら許さねぇ、くらいの怒りを込めて。

 きっとシュウは、女性だから頼んだに過ぎないのだろう。

 会社で秘書に来客用のお茶をお願いするくらいの気持ちで。

 それすら、カイトには許せなかっただけなのだ。

 こいつは、こいつは!

 メイは、カイトにとっては。

「大の男が、何を使用人のことで騒いでいる」

 しかし。

 この2人のやりとりに、顔を顰めたアオイが口を挟んだ。


 カイトの息が――凍った。
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