冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 片手とおなかでトレイを支えて、ノックをする。

「失礼します…お茶をお持ちしました」

 入る時だけちょっと片手で苦労しながら、メイは部屋の中に入った。

 が、予想していた雰囲気と違うことに気づいて立ち止まる。

 あの3人が語らっているのだ。

 そんなに悪い雰囲気じゃないと思っていたのに、ドアを開けてみたらそこにいたのは4人だった。

 ソウマ。
 シュウ。
 カイト。

 メイは、視線を動かしてメンバーを確認する。
 そこまでは、予定通りだった。

 しかし、もう一人いた。

 黒髪に少しだけ白髪の見える男。

 見るからに、厳しそうな人であるのが分かった。
 失敗をしようものなら、もの凄く怒りそうなタイプである。

 気むずかしい上司の目の前に来た気持ちになってしまい、メイは思わず緊張してしまった。

 しかし、カイトはというと、ひどく驚いた顔になって彼女を見ている。

「茶なんか出すな!!」

 おまけに怒鳴られてしまった。

 え? え? ええええ?

 頼まれたから、お茶を入れてきただけなのだ。

 なのに、どうして怒られなければならないのだろうか。

 話が通じていない様子に、シュウとカイトを見比べてしまう。

 すると、眼鏡が室内灯に反射した。顔の角度を変えたのだ。

「私がお願いしました」

 助け船が出た。

 これで、メイが勝手な真似をしたのではないと分かってもらえるだろうと、ほっとする。

 しかし、場はなごむどころか、ますます悪化した。

「んなこたぁ、最初から分かってんだよ! おめーは、こいつにそんなことを言う権利なんかねーんだ!」

 今度は、シュウにバンバン怒鳴るのだ。

 唖然として、その光景を見つめてしまう。

 あのっ。

 お茶を頼まれたことについては、気にしているワケではないので、それをカイトに伝えようと思った。

 別にイヤなことではないのだと。

 それどころかおやすいご用だ。

 もしもメイを無視して、自分らでお茶でも何でもいれられてしまったら、彼女の居場所というものがなくなってしまう。
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