冬うらら~猫と起爆スイッチ~
☆
「あなた…?」
報告を、楽しみにしていたのだろう。
帰るなり妻が玄関まで出迎えてくれたが、ソウマの様子に足を止める。
「だめだ、だめだ…まったく、あいつは話にならん」
上着とネクタイを乱暴な手つきでひきはがし、彼女に渡す。
この不満を、唯一分かち合える相手でもあった。
シュウじゃ話にならないし、アオイには説明する気も起きない。
説明した途端、余計にカイトの株を下げるだけだ。
あの教授が、色恋について寛大であるとは思い難かった。
「教授の見合い話を断ることは、最初から分かっていたが…よりにもよって、彼女の目の前で『オレは絶対結婚なんかしない!』と怒鳴ってくれたよ」
そのまま居間のソファにどかっと身を投げ出しながら、ソウマは天井を仰いだ。
「まぁ…」
ハルコも、眉を寄せて。
「進展するどころか、後退もいいところだ…やれやれ」
頭が痛い。
ハルコがコーヒーを入れてくれる。
ソファから身体を起こして、そのカップを掴む。
呆然としたままのメイが甦って。
彼女は、トレイを持ったまま立ちつくしていた。
あの話の展開に、全然ついていけてないようだった。
それもそうだ。
カイトに、見合いが来たことさえ知らなかっただろう。
その件だけでもショックなはずだ。
大体、あそこにメイが現れるのは計算外だったのである。
あくまで彼女はカヤの外に置いておくつもりだったのに。
シュウが。
あの副社長にも問題があった。
今回の見合いの相手は、資本家の娘である。
資本家―― それがシュウのアンテナに引っかかったのだ。
ソフト会社が一番持っていないもの。それが資本力である。
資本金などほとんどなくても会社が始められるのだ。
裏を返せば、裏付けのない力ということになる。
一度失敗したら、後がないということ。
シュウは、その会社の弱点を補強しようとしたのである。
「あなた…?」
報告を、楽しみにしていたのだろう。
帰るなり妻が玄関まで出迎えてくれたが、ソウマの様子に足を止める。
「だめだ、だめだ…まったく、あいつは話にならん」
上着とネクタイを乱暴な手つきでひきはがし、彼女に渡す。
この不満を、唯一分かち合える相手でもあった。
シュウじゃ話にならないし、アオイには説明する気も起きない。
説明した途端、余計にカイトの株を下げるだけだ。
あの教授が、色恋について寛大であるとは思い難かった。
「教授の見合い話を断ることは、最初から分かっていたが…よりにもよって、彼女の目の前で『オレは絶対結婚なんかしない!』と怒鳴ってくれたよ」
そのまま居間のソファにどかっと身を投げ出しながら、ソウマは天井を仰いだ。
「まぁ…」
ハルコも、眉を寄せて。
「進展するどころか、後退もいいところだ…やれやれ」
頭が痛い。
ハルコがコーヒーを入れてくれる。
ソファから身体を起こして、そのカップを掴む。
呆然としたままのメイが甦って。
彼女は、トレイを持ったまま立ちつくしていた。
あの話の展開に、全然ついていけてないようだった。
それもそうだ。
カイトに、見合いが来たことさえ知らなかっただろう。
その件だけでもショックなはずだ。
大体、あそこにメイが現れるのは計算外だったのである。
あくまで彼女はカヤの外に置いておくつもりだったのに。
シュウが。
あの副社長にも問題があった。
今回の見合いの相手は、資本家の娘である。
資本家―― それがシュウのアンテナに引っかかったのだ。
ソフト会社が一番持っていないもの。それが資本力である。
資本金などほとんどなくても会社が始められるのだ。
裏を返せば、裏付けのない力ということになる。
一度失敗したら、後がないということ。
シュウは、その会社の弱点を補強しようとしたのである。