冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
入ってくんな!
彼の希望は、本当にそれだけだった。
自分が思っている以上に、カイトは彼女のことを大切に思っていた。
使用人扱いされて、あんなにキレたのが何よりの証拠である。
メイもそのことを気にしているのではないかと、キレが冷えてきた時に心配になった。
その時、彼女は目の前にいた。
苦手そうな素振りを隠すようにしてコーヒーに付き合いながら、カイトの目の前に座っていたのである。
「おめーは…」
だからカイトは言いかけた。
メイは、はっと顔を上げる。
言いたかったのは―― 「おめーは、使用人なんかじゃねぇ」
しかし、それを言うことが出来なかった。
何故なら、その後に来るだろうと予想される質問に、答えることが出来なかったからだ。
『じゃあ、私は何なんです?』
その質問に、どうしてスラスラと答えられよう。
カイトは、答えを持っていなかったのだ。
それが、苦しくて悔しかった。
アオイに使用人扱いされた時。
『こいつは使用人なんかじゃねぇ! こいつは…!』
そう怒鳴ってやりたかった。
けれども、その『こいつは…』の後の言葉が、一文字も自分の中になかったのに呆然として、それがキレを増幅させてしまったのだ。
メイは、誰のものでも、そうして何者でもなかったのである。
彼自身が、そんな立場に置いているのだ。
じゃあ、どんな立場がつけられるってんだ!
せめぎ合うのは、一般常識の槍と「いやだ!」で作られているわがままの砦。
メイは成人女性で、保護している必要はない―― イヤだ。
借金のカタに身柄を拘束しているのなら、しょうがない―― そうじゃねぇ!
家政婦として恩返しがしたいというのなら、そうさせても何も問題はないはず―― イヤだっつってんだろ!
という有様なので、この戦いに決着が来るハズがなかった。
入ってくんな!
彼の希望は、本当にそれだけだった。
自分が思っている以上に、カイトは彼女のことを大切に思っていた。
使用人扱いされて、あんなにキレたのが何よりの証拠である。
メイもそのことを気にしているのではないかと、キレが冷えてきた時に心配になった。
その時、彼女は目の前にいた。
苦手そうな素振りを隠すようにしてコーヒーに付き合いながら、カイトの目の前に座っていたのである。
「おめーは…」
だからカイトは言いかけた。
メイは、はっと顔を上げる。
言いたかったのは―― 「おめーは、使用人なんかじゃねぇ」
しかし、それを言うことが出来なかった。
何故なら、その後に来るだろうと予想される質問に、答えることが出来なかったからだ。
『じゃあ、私は何なんです?』
その質問に、どうしてスラスラと答えられよう。
カイトは、答えを持っていなかったのだ。
それが、苦しくて悔しかった。
アオイに使用人扱いされた時。
『こいつは使用人なんかじゃねぇ! こいつは…!』
そう怒鳴ってやりたかった。
けれども、その『こいつは…』の後の言葉が、一文字も自分の中になかったのに呆然として、それがキレを増幅させてしまったのだ。
メイは、誰のものでも、そうして何者でもなかったのである。
彼自身が、そんな立場に置いているのだ。
じゃあ、どんな立場がつけられるってんだ!
せめぎ合うのは、一般常識の槍と「いやだ!」で作られているわがままの砦。
メイは成人女性で、保護している必要はない―― イヤだ。
借金のカタに身柄を拘束しているのなら、しょうがない―― そうじゃねぇ!
家政婦として恩返しがしたいというのなら、そうさせても何も問題はないはず―― イヤだっつってんだろ!
という有様なので、この戦いに決着が来るハズがなかった。