冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「イチゴとチョコレートとチーズとモンブラン…どれが好き?」

 箱を開けながら、ハルコは楽しそうに種類を言った。

 ほのかに甘い匂いが漂う。

 無意識に胸がどきどきしてしまうのは、甘いもの好きの悪いクセか。

「そんなにたくさんあるんですか?」

 覗き込むと6個も入っていた。二人で食べるにしては、ちょっと多くはないだろうか。

「何だか味覚が変わっちゃって…時々、無性に甘いものが食べたくなるのよ」

 お医者様には、内緒にしとかないと。

 しっと人差し指を立てるハルコは、いつもの大人びた雰囲気とはちょっと違う色をしていた。

 甘いもの好き同士の親近感で、二人顔を見合わせてふふっと笑った。

「それじゃあ、モンブランを…」

 普通のモンブランは黄色なのに、このモンブランは薄灰色をしている。

 どんな味か興味があった。

「いい目をしてるわね…ここは、一番モンブランがおいしいのよ。このクリームの色はね、渋皮が…」

 そんな風に、ひとしきりケーキの話題で盛り上がってしまった。

「おいしかったです…」

 銀紙をフォークで畳みながら、メイは幸せのためいきをついた。
 やっぱりケーキは、すごく幸せにしてくれる食べ物なのだ。

「カイト君と一緒じゃ、甘いものなんて食べられないでしょ?」

 クスクスと笑いながら、ハルコもフォークを置いた。

 はぁ、と曖昧に返事をしながら、紅茶のカップに手をかける。

「そうなのよねぇ…本当にカイト君ときたら唐変木でしょう? いろいろ、あなたがつらい思いをしてるんじゃないかと心配なのよ」

 ハルコの口から、しみじみとそんな言葉が出てしまってびっくりする。

 彼女の立場を心配してくれているのだ。

「あ、あの! そんなことないです! つらい思いなんて…!」

 慌てて否定する。

 どうにも誤解があるらしい。

 ソウマとどんな話をしているのかは分からないが、このままでは彼の立場が悪くなってしまう。

 メイは誤解を解くために強い口調で反論したのだ。
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