冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
第一。
何故そんなことを、わざわざ自分に告げるのだろうか。
「そうなんですか…あ、お茶おかわり用意しますね」
ハルコの目の前で、その件について考えることが出来なくて、メイは慌ててティーポットを持って立ち上がった。
何気なさを装って。
カイトの結婚について、自分が興味を抱いているなんて思われたくなかったのだ。
ハルコは事情をよく知らないから、別に他意はないのかもしれない。
けれど、話がどう回って彼にたどりつくか分からないのだ。
唯一、メイと秘密を共有している相手は、しかし、一番その事実を忘れて欲しい相手でもあった。
いや、彼女自身が忘れたかった。
あんな出会い方じゃなくて、もっと普通の出会いだったなら、気持ちをこんな爆弾にしてしまうことなどなかったのに。
お茶のために少しのお湯を沸かしながら、ため息をついた。
もっとうまく隠さなきゃ。
自分の態度が、いま不自然ではなかったかが心配になる。
カイトと結婚という言葉に、動揺なんかしてはいけないのだ。
できれば。
ハルコが言う言葉よりも、自分の解釈の方を信じたかった。
カイトは誰とも結婚する気がないのだと。
どんな女性も好きではなく、仕事一筋で生きていくのだと―― たとえ、それが都合のいい解釈であったとしても、いつかカイトの気が変わることがあったとしても、いまはそう信じたかった。
考えていると、どんどん気持ちが沈む。
こんな顔では、ハルコのいるところへと帰れそうもなかった。
さっきの言葉が尾を引いています、と言わんばかりではないか。
自分の頬を、ペチペチと叩いた。
何事もなかったように。
ガスを切る。
一息止めて熱を飛ばしてポットに注ぐ。
深呼吸一つ。
「赤ちゃん、いつが予定日なんですか…?」
ポットを持って戻りながら、笑顔でメイは話をすりかえた。
第一。
何故そんなことを、わざわざ自分に告げるのだろうか。
「そうなんですか…あ、お茶おかわり用意しますね」
ハルコの目の前で、その件について考えることが出来なくて、メイは慌ててティーポットを持って立ち上がった。
何気なさを装って。
カイトの結婚について、自分が興味を抱いているなんて思われたくなかったのだ。
ハルコは事情をよく知らないから、別に他意はないのかもしれない。
けれど、話がどう回って彼にたどりつくか分からないのだ。
唯一、メイと秘密を共有している相手は、しかし、一番その事実を忘れて欲しい相手でもあった。
いや、彼女自身が忘れたかった。
あんな出会い方じゃなくて、もっと普通の出会いだったなら、気持ちをこんな爆弾にしてしまうことなどなかったのに。
お茶のために少しのお湯を沸かしながら、ため息をついた。
もっとうまく隠さなきゃ。
自分の態度が、いま不自然ではなかったかが心配になる。
カイトと結婚という言葉に、動揺なんかしてはいけないのだ。
できれば。
ハルコが言う言葉よりも、自分の解釈の方を信じたかった。
カイトは誰とも結婚する気がないのだと。
どんな女性も好きではなく、仕事一筋で生きていくのだと―― たとえ、それが都合のいい解釈であったとしても、いつかカイトの気が変わることがあったとしても、いまはそう信じたかった。
考えていると、どんどん気持ちが沈む。
こんな顔では、ハルコのいるところへと帰れそうもなかった。
さっきの言葉が尾を引いています、と言わんばかりではないか。
自分の頬を、ペチペチと叩いた。
何事もなかったように。
ガスを切る。
一息止めて熱を飛ばしてポットに注ぐ。
深呼吸一つ。
「赤ちゃん、いつが予定日なんですか…?」
ポットを持って戻りながら、笑顔でメイは話をすりかえた。