冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「んなんじゃねぇ! とにかく、買いに行くな!」

 そうして、イラつくと余計に言葉がおかしくなる。

 これでは命令形だ。

『買いに行く必要はない』や『買いに行かなくてもいい』と言えばよかったのに、つるっと舌から滑り出した言葉は、厄介な色がついていた。

「は…い」

 メイは、悲しそうな眉になってそう答えた。

 まるで、命令なら聞かなければならないという風な声で。

 そうじゃ…。

 そうじゃねぇ。

 またも、言葉がうまく通じなくなる自分に歯がゆい思いをする。

 パンを押し込む。スープも流し込む。野菜炒めも突っ込む。

 全部居心地の悪い空気と一緒に胃袋に放り込んで、席を立った。

 そうして、精一杯の譲歩した声で言った。

「米くれぇ…買ってきてやる」

 本当に、精一杯の譲歩だった。
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