冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 そうだ!

 メイは、そのまま彼の部屋を素通りして階段を下りた。ダイニングに向かう。

 コーヒーでも入れて、持っていけばいいのである。

 何気ないお茶の時間を装えば、そういう話が切り出せる雰囲気が見つかるかもしれない。

 いそいそと、お茶の準備を始めた。

 カイトのためにはコーヒーを。自分のためには紅茶を注ぐ。
 あんまり仰々しくならないように、どちらもマグカップにした。

 まだ9時だ。

 そんなに早くは眠らないようだから、カイトにとっても息抜きになるかも、と自分に言い聞かせながら。

 トレイを持って階段を上る。

 改めて、ドアの前に来ると。

 ドアをノックした。

 トントン。

 シーン。

 あら?

 トントン。

 シーーーーーン。

 やはり、ドアの向こうから反応はこない。

 お風呂にでも入ってるのかな。

 メイは不安になった。

 眠っている時間とは思えない。

 だが、お風呂は計算外だった。

 勝手に入るワケにもいかないし。

 彼女はその場に立ちつくしたまま、どうしようかと迷っていた。

 すると、階下でガチャドサッバタッのような、物音がするではないか。誰かが帰ってきたようだ。

 シュウが帰ってきたのかと思ったが、彼の帰宅にしてみれば騒々しい。

 何だろう。

 そう思いはしたものの、トレイを持ったままでは身軽に動けない。

 どうしようかと悩んでいる内に、下の喧噪がやんだ。ダンダンと強い足音が階段を上ってくる。

 え?

 シュウが階段を上がっているとは思い難かった。

 絶対にないとは言えないが、あんなうるさい足音で上ってくるはずが。

 メイは、戸惑ったまま階段を見ていた。
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