冬うらら~猫と起爆スイッチ~

12/09 Thu.

□111
 雨は、すっかりあがっていた。ついでに―― 朝食は、ご飯だった。

 それを目の当たりにすると、カイトは朝っぱらからひどく落ち着かない気分にさせられた。

 メイはいつにも増して上機嫌で、全身のオーラで彼にお礼を言っている。

 ありがとうございます、と。

 カイトは、走って逃げたい衝動を押さえ込まなければならなかった。

 女の反応一つに振り回されている自分に苛立つが、どうしようもなかった。

 それで、余計にまた自分を苛立たせるのだ。

 悪循環もいいところである。

 幸いだったのは、わざわざ言葉でお礼を言われなかったことだ。

 そんなことをされようものなら、カイトは本当に針のむしろとなったことだろう。

 昨日、思ったよりシュウが帰ってくるのが早かったから。

 ただそれだけなのだ。

 タバコも切らしていた。

 ついでに過ぎなかったのだ。

 と、自分に言い訳はするものの、夕食の後に部屋に戻ったカイトの頭を占めていたのは、米とメイの関係ばかりで。

 要するに。

 米を買うのが遅くなればなるほど、メイがパンを買いに出かけなければならない。

 それもまた、イヤだったのである。

 だから、シュウが帰ってきたのと交代で車を出したのだ。

 雨はザーザーと降っていた。

 米なんか買ったことはなかったが、ディスカウントの酒屋で見たような記憶があったので行ってみると、まだ店は開いていて、予想通り米もあった。

 どの銘柄がいいかは分からない。

 ただ、コシヒカリとかいう名前くらいは、カイトだって知っているのだ。

 それを一つ持つ。

 なるほど、5キロだ。

 これを抱えて帰ってくるつもりだったのである。

 その憎い重みを持って、レジに行きかけて戻った。

 5キロの米が、一体何日分になるのか、全然見当がつかなかったのだ。

 すぐに切れるようであれば、メイが今度は黙って米を買いに出るだろうことくらい、カイトにだって予想がつくのである。

 どさどさっ。

 3つ。


 カイトは――15キロという重さを具体的に知った。
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