冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「あらそう? それで、朝からお米を買い出しに行ったの? しかも、3つも」

 体力があるわねぇ。

 ハルコは、ちょっと驚いたような顔をしていた。

 あっ。

 メイは、はっとした。

 嬉しさの余り、何度もお米を眺めていたために、まだ調理場の台の上に置いたままにしていたのだ。

 お湯を沸かしに入った時に、それを彼女に見られたのだろう。

「えっと…あの…」

 困った。

 ここで、『はいそうです』と答えたらウソになる。

 しかし、カイトが買ってきてくれました、と言うことなんか出来そうになかった。

 そう言うと、いまの自分の上機嫌の原因を知られてしまいそうだったのだ。

 それに、カイトの立場が悪くなりそうだった。

 彼は、ソウマ夫婦にからかわれるのが嫌いなようだ。

 誰でもからかわれるのはイヤだろうが、特にカイトは彼らが来るとムキになる傾向があって。

 いっそ、ハラをくくってウソを突き通せればいいのだが。

 ハルコを相手にだと、出来そうになかった。

 元々、上手にウソがつけないのに。

「あら? どうかしたの?」

 反応できないでいるメイに、首を傾げられる。

「あ、いえ何でもないです…お茶、ありがとうございます」

 慌てて、彼女はごまかそうとした。

 動き回っていて身体は少しあったかいものの、指先は冷えているのだ。

 カップを持つと、幸せなぬくもりが伝わってくる。
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