冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 今度の週末は、おとなしくしていなければならないだろう。

 カイトが家にいるのだ。

 いつ、どこで働いているのを見られるか分からない。

 先週みたいな事件が起きるのは、もうこりごりだった。

 あんな恥ずかしい思いは――

「そうそう…今日は、ちょっと聞きたいことがあったのよ」

 ようやく笑いが終わってひと心地ついた時、話が変った。

 ほっとするメイをよそに、ハルコが楽しそうな口振りで切り出す。

「クリスマスは、何か予定が入っているの?」

 言葉に驚いたのはメイだ。

 そう言えば、いまは12月なのである。

 もうあと二週間もすればクリスマスだった。

 この家にはテレビがない。

 雑誌もない。

 買い物にも、たまにしか出ないので忘れていたのである。

「いえ、特別には…」

 答えながらも、クリスマスを楽しめる立場ではないということも分かっていた。

「そう? それじゃあ、うちで小さなパーティをやろうと思っているの…カイト君とこない?」

 なのに、何と気楽に彼女は言ってくれるのか。

 そんなこと、メイが決められるはずなどないのに。

「あの…いえ、私は遠慮しておきます」

 困った笑顔になるのを止められない。

 何とかそう答えると、ハルコは少し驚いた表情になった。

「カイト君が反対するってこと? ああもう…クリスマスくらい、少しハメを外してもいいのに。たまには、あなたに羽根を伸ばさせてあげないといけないってことを分かってるのかしら」

 ため息混じりに、ハルコは呟いた。

「分かったわ…カイト君がOKを出せばいいのよね。彼に直接招待状を渡すわ…大丈夫、何とか口説いてみせるから」

 ねっ、とウィンクされても―― メイは、それに答えることができなかった。
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