冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 だが、昨日はその気持ちに押されて、ぐいぐいとコーヒーを飲んでしまったのだ。

 おかげで、彼女はあっという間に出ていってしまった。

 それを踏まえると、たとえカップを持っていたとしても、口をつけるのをぐっと我慢しなければならないのだ。

 一口つけると、昨日と違って熱いコーヒーであることが分かる。

 今すぐ処理できそうになかった。

 それも幸いだったか。

 とにかく、カップを持ったカイトは、違うことをしていなければならなかった。

 別の方に気があるようによそを向いたり、考え事をする素振りをしたり。

 時々、飲んで。

 その内、コーヒーがすっかりぬるくなる。

 メイのカップの方も、残り少なくなってきているようだ。

 さりげなく、彼女の手元を盗み見る。

 お互い、それ以上カップに口をつけようとしなかった。

 きっとメイは、一人だけ飲み終わるワケにもいかないと、彼の間合いを計っているのだろう。

 これ以上引き延ばすのも不自然だった。

 カイトはしょうがなく、マグカップを空っぽにしたのだ。

 それを見た彼女も、多分すっかり冷たくなってしまっただろう紅茶を飲み干して。

「それじゃあ、おやすみなさい」

 そう言うのだ。

 寂しさが、胸に滑り込んでくる瞬間。

 たとえ同じ家に住んでいたとしても、彼女がいろんな言葉をかける時に、別れもやってくる。
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